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第二十四話:俺はお前を殺すことになる

「愛歌……」


 数分たち、泣いていた愛歌が落ち着いてきたとき、ゆっくりと話始めた。


「きっとこのペースでいけば義涼さんは、愛歌の病気を治す方法を見つけると思う」


 あの人も愛歌の親であるだけあって天才だ。俺が何もせず傍観していれば、十中八九愛歌の病気は治るだろう。


「そうでしょうね……」

「でもそうなれば、多くの人が死ぬことになる」

「うん」

「愛歌がそれを望まないなら、俺は……」


 もう一度、愛歌の目を見る。


「俺は愛歌を殺すことになる」

「……ええ。わかってる」


 愛歌は微笑んで見せた。


「ずっとね、私も考えてきたことがあるの。なんであなたはヒーローになったのかって」

「え、いや、それは……」

「暇つぶし? 贖罪? それが理由なのなら、ヒーロー以外にも道はあったはずじゃない? ってずtっと思ってたのよ」


 そうか?

 頭の中で考えてみる。が、思いつかなかった。


「ほら、他の選択肢が思いつかなかったんでしょ? きっとやり方はいくらでもあった。でもね、あなたは無償で人を助けるという方法以外を取れなかった」

「頭が悪かっただけだよ」

「そうやってまた自分を卑下する。違うよ。確かにあなたはバカなとこもあるけど、馬鹿ではない。そうしたのはあなたが……、物凄く、優しい人だからだよ。自分では気づいていないだけで優しすぎるぐらい。だから私はあなたを、青水白という男の子を愛しているの」


 面と向かって改めて言われると少し照れ臭い。


「だからね。もし私を生かすためにお父様を見過ごしても、きっとあなたは自分が助けられるハズの人が傷ついている事に我慢ができない。このままお父様を止めなかったら、あなたはきっと一生自分を許せなくなる。だから……」


 愛歌は目の前にキーボードを出し少し操作した。


「私もお父様と戦う、その覚悟を決めるわ。今スーツにお父様がいるであろう場所の候補をマークした。必ずそのどこかにお父様がいる」


 愛歌自身、父親を看過できなかったのだろう。そこまで調べ上げてくれていたとは。


「だからお父様を止めて……、お願い」

「わかった」


 スーツを身に纏い、窓に向かって歩く。


「愛歌」

「なぁに?」

「最後の最後で誰かの役に立ちたい、そう思うことができた愛歌もまた、優しすぎる人間だって、俺は思うよ」

「……ありがとう」


 窓枠に乗っかった。


「帰ってきたら一時休業だ。動けるうちに美味いもんでも食いに行こう」

「ええ、そうね。楽しみにしてる」

 

 最後に振り返って愛歌の目を見た


「んじゃ、行ってくる」

「いってらっしゃい」


 その言葉を背に街に飛び出した。



   *



 白を見送る。見えなくなるまでその姿を目で追っていた。


「……私も、……バカね……」


 そうつぶやいて、私は覚悟を決めた。


「サラ」

『はい愛歌様』

復活祭(イースター)プログラムを実行して」

『……本当に、よろしいのですか?』

「ええ、そういっているでしょ。早くして」

『承知しました。では愛歌様、失礼いたします。短い間でしたが今までお使いすることができ、光栄でした』


 私もよ、サラ。

 心の中でそうつぶやいた。

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