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第十八話:ノクティルーカVSヴァーミンキラー(後編)

 白は私から離れ、烏天狗を始末するべく歩いていた。


「もうやめてっ!」


 それを見ていた時、私は白の背にそう叫んでいた。

 そうしなければもう、白は私のところに戻ってきてくれない気がしたから。


「わからないよ……」


 声を漏らす。


「私にはわからないよ。これまでのあなたが何に絶望して、何に心を打ち砕かれてきたのか。それは私にはわからないよ」


 それは簡単にわかるなんて言っていいものではないとそう思った。


「でもさ、少なくともこれだけはわかるよ。……あなたがやってることは間違ってる」


 白は振り返らずに歩みを止めていた。


「きっとこの行いも贖罪のため、そう思ってるんだよね。でもそれって言い訳なんじゃない? 行き場のない感情をぶつけているだけなんじゃない?」

「……だとしたらなんだってんだよ」

「それは逆効果だよ。あなたは優しいから……。きっとあなたはあなたを許せなくなる。そして新たに生まれた感情の行き場を求めて、また同じことを繰り返してしまう。誰かを傷つけるたび、誰かを殺すたび、あなたはあなたを殺してるっ! それが私には見ていられないのっ!!」


 そうこれは贖罪じゃない。ただの自傷行為だ。

 ヴァーミンキラーが白だとわかったときに悲しみより怒りが先に来てしまったのはこれが理由だったんだ。

 私は後ろから白の手を取った。

 

「もう一度言うね。私にはわからないよ、何が正解のか。何が正義なのか。何があなたを救うのか。それは私にはわからない」

「……」

「私はあなたが人殺しだって構わない。怪物だろうとどうも思わない。でも……、もっと自分を大切にして。もうこれ以上、私の大好きな人を傷つけないでっ!」


 白のスカーフを外しこちらに振り返らせた。


「ねぇ。もういいんだよ。もうあなたはあなたを許していいんだよ」

「……っ」

 

 そう言ったとき、白の頬に一筋の涙が流れた。

 そうきっと白は許されたかったんだ。

 罪の償い方がわからず、余計に罪を重ねつづけ、ずっとその地獄から抜け出せなかった。

 でも答えはもっと単純。

 誰より白の事を許せなかったのは白自身だった……。まずは自分を許してあげればそれでよかったはずなんだ。

 けどそれは何よりも難しいことなのだろう。


「あなたは独りじゃない。私がいる。あなたの悲しみも苦悩も闇も全部一緒に背負うから。あなたから私を失わせたりしないから。いつまでだって隣にいるから。……だからもうこんなことはやめて。あなたには、この仮面しか似合わないよ」


 白の腕時計から仮面を取り出し、白の顔に取り付けた。

 白が誰の目も気にせず、泣くことができるように……。

 そして私は白を抱きしめる。


「愛歌……、ごめん。俺……」


 白も嗚咽しながら私を抱きしめた。


「うん。わかってる」


 これくらいじゃ、白の闇は払いきれないだろうけど。

 少しづつ光が差し込んでくれる、そのきっかけになってくれたら嬉しいと思った。

この辺の話は何度も書き直しました。

まだこれでよかったのかわかりません。

でも今の僕が書ける精一杯を書いたつもりです。

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