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第十五話:ヴァーミンキラーVS牛鬼

 男に与えられたコードネームは、牛鬼。本名を本馬奏(ほんま かなで)。42歳。

 最後に逮捕される前までは、画家だった。捕まった理由は三度目の麻薬取締法違反及び、殺人。

 彼の望みは1つ、娘との再会。次の春には小学一年生になる。

 東亜刑務所に入る者は二度とその外に出ることはないと言われる。だからリィナスエイジの策にのったのだ。

 だが、間違いだったのではと思い始めた。

 もう犯罪は犯さないと決めた。だというのに、外に出て命令されるのは、殺人、強盗、誘拐、そんな事ばかり。これでは再会など、いつになることやら……。


「しけたとこだなぁ。はるばる来たんだから、少しはもてなしを期待したんだけど?」

「誰だ?!」


 今、この部屋には自分を警護する者以外の侵入を許していない。

 つまり男は部外者だ。

 スカーフで目から下を覆い隠し、獣のような目をした男。

 本能的にこいつはやばい、と感じさせる人間だった。


「ヴァーミンキラー……」


 酒吞童子の工場を皮切りに、多くの脱獄囚やアガニレスの隠れ家を蹂躙し、皆殺しにしてきたというこの男。

 まるで害虫でも駆除するかのように淡々とそれを行っていくために世間では"ヴァーミンキラー"と呼ばれ、過激な者から信仰を集めていた。

 

「牛鬼さま!」


 警護のため残していた牛鬼以外の四人が、ヴァーミンキラーめがけ発砲する。

 ヴァーミンキラーは動かずにその場に立っていた。


「はーあ。ただの銃で俺を殺せると思ってるのか」

「な?!」


 リィナスエイジ製の最新の攻撃を武器を受けて無傷。有り得ない、と牛鬼は思った。


「さーてと、とりあえず掃除だな。四銃爪カルテット・フィンガン


 ヴァーミンキラーは右手を前に出す。

 次の瞬間、ヒュオッ、という音が鳴ったかと思うと、牛鬼以外の四人が声もあげずに倒れた。

 頭部から血が湧水のように流れ出ている。

 それをみてまず出た感情は……。


「何をされた……?」


 恐怖でも怒りでもなく、疑問。牛鬼は訳が分からず呟いていた。


「空気砲ってあるだろ? それと同じだ。指で空気を弾いた。額に俺の指と同じくらいの穴が開いているはずだ」

「は……?」


 淡々と何でもないことのように説明されるその驚くべき事実に男は動けずにいた。

 それが本当なのであればヴァーミンキラーは数秒のうちに何十という人間を殺す事ができることになる。


「ちっ! 化け物が!」


 警報を鳴らす。

 こうなれば数で倒すしかない。


「はぁ、またこうなるのか。じゃあやりやすいようにしてやるよ」


 ヴァーミンキラーはここで一番大きいエリア、つまり工場のエリアに飛び退いて行った。

 寝ていた者も含め、全員が武装しこのエリアに集まった。


「これで全員か? んじゃあパーティを始めよう」


 ヴァーミンキラーが手をたたきながら、大きい声でそういった。


「3秒やるから神にでも祈るんだな。3……」


 秒読みを始める。緊張感が走った。


「2……、1……、影に這い寄る死ナイアルラトホテップ・シャドウ


 獣の唸り声の様に唱えた。言い終わると同時に、その空間を静寂が支配した。

 息づいていた人のその呼吸1つも消え、静かになった。

 そして数秒経ってやっと死んだことに気が付いたかのように1つ、また1つとそこにいた人間だった物が倒れていく。

 残ったのはヴァーミンキラーと牛鬼の二人だけだった。


「……っ?!」


 恐怖、それ以前に、何が起こったのかわからない、という混乱が脳を支配する。

 135人。その全ての命が一瞬にして奪われた。

 ヴァーミンキラーは腕を振ることもせず、音も立てず、まるで死神が命の蠟燭を一息に消し去ってしまったかのように、大量殺戮を行った。

 現実離れしたその状況に、困惑していたのだ。


「……さてと。お前は最後にとっといてやったんだ。少しは楽しませてくれよ」

「やめてくれ……!」


 しかし同時にそれは牛鬼の戦意を砕くには十分だった。

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