第十三話:更なる異変
1月。
世間はもう正月気分が抜け始めているころ、俺は神奈川県めがけて走っていた。
『そこにいるのは、酒吞童子らしいわ』
あいつか。腕が機械で覆われてて、太かった男。
一発の攻撃威力は七人の中で一番だったな。
『こんどは腕を切落しちゃうんじゃないか、なんて気に病まなくていいわよ。スーツに搭載した新兵器を信じてよ』
「ああ、愛歌の事は信じてるよ」
また周りに民家がない場所にあった工場らしき建物を見つける。
『さぁーてと、ささっと、入れそうな入口を探しましょう』
最近愛歌は無理に明るく接してくれてる。
俺自身まだいろいろなことから立ち直れていないからだと思う。
気を遣わせてしまっているのが申し訳なかった。
「なぁ、愛歌……」
俺にできることは自分自身もできる限り、前に進めるよう努力するだけだ。
『なぁに? 今度はみんな鼻が取れてるとか言い出すんじゃないでしょうね?』
「いや、そうじゃないけど、気づかないか? 見張りもいなけりゃ、異常なほど静かだ」
工場というにはあまりにも音の数が少ない。人の気配なんて全くない。
『え? ペック、調べて』
『スキャン中……、人間の生体反応、確認できません』
『っ?! 白、急いで確認を!』
「ああ」
中に入る。
人の体と思しきものが、目測で百と数十、工場のエリアに転がっている。
床は赤茶色に濃く染っていた。
「俺の目から見ても、生き残りはいないな。拷問したって様子もないから一方的な蹂躙。誰もかれも一息に殺されてる」
『そんな……、誰が……』
「さあね。血が完全に乾ききってる。死体は冷たいしそれに」
嫌な臭いが鼻に入り込んできた。
「死臭が出てきてる」
『そう。最低でも3、4日は経っていそうね』
部屋の隅を見遣りながらいった。
『一応警察に連絡はするわ。今回はまだ時間がある。他の隠れ家の手がかりと、監視カメラの映像があれば持って帰ってきて』
「わかった」
それらしきもののデータをスーツに写し、警察に連絡し、愛歌の家に帰った。
今回は少し短くなりました。
長い話が多かったので、休憩。