第十一話:家族
父親が帰ってきてずっと両親から問い詰められていた。
でも話すことができず、ずっと黙っていて家を出てきてしまった。
何をムキになっていたのか。適当なウソでもついておけば、それで済んだ話だろうに。
まだまだ子供だな、俺。
そしてその夜……。
「来るなら来るって連絡してよ。窓に座って待たれても気付かないでしょ」
気づいたら愛歌の家に来ていた。
「……ああ、悪かったよ……。実は30分くらい待ってた」
乾いた笑いと共に返す。
愛歌の声を聞くと、なんだか落ち着いた。
「……どうしたの?」
何かを察してくれたらしい愛歌がそんなふうにきいてきた。
「愛歌は、お父さんと喧嘩したことある?」
「あー」
その一言で何があったのか気づいたらしい。
「えぇ、そうね。最近はないけれど、小さかった頃はしょっちゅう」
「そうなのか」
「意外?」
「少しね」
仲良さそうに見えたから。
「お父様が悪かったこともあれば、私が悪かったこともある。そういう時、私がヴァイオリンを弾いているとね、お父様が聴きにきてくれて、それで、褒めてくれるの。その後、とことん話し合った。納得いくまで」
「そっか」
「あなたは?」
その問いかけに、少し記憶を探ってから返事をした。
「俺は……、記憶にある限りじゃ、今日が初めてだな」
「そう。それこそ意外ね」
そうかな。
「わかったフリしとけば大人は、勝手に満足してくれたから。兄貴が怒られてばっかの奴だったからかな、立ち回りを覚えたのもあると思う。でもいざ喧嘩してみると……、家族に酷い事が言える自分に驚いたよ」
「誰だって心にないこと言ってしまう時はあるわよ。ご両親もきっと分かってくださるわ」
普段うるさいくせに、こういう時ばっかこの女は優しいんだ。だから、一緒にいて心地がいいのだが、ずるいとよく思わされる。
「ねぇ、この活動の事、ご両親に説明しない?」
「え?」
「これからずっと喧嘩していたって埒が明かないでしょ? 私からもちゃんと説得するから、ちゃんと話し合いましょうよ」
「……」
「最終的な判断はあなたに任せるけどね。今日は泊まっていきなさいよ。明日になれば、頭も冷えるでしょ」
「ありがとう」
その夜はお言葉に甘えることにした。
…………。
……。
…。
前に、異世界にいた時に、仲間が死んだ事があった。
なぜってそりゃ、俺がそいつを信用できなかったのが原因だ。
俺がもっと人を信用できる性格だったら、自分を大切にしてくれる人だけでも大切にすることができる人間だったら、それだけで何かが変わってくれただろう。
……まぁ、何が言いたいかって、世のたくさんの物語で言われている月並みなこと。
大切な物ってのは、失ってから気づくんだ。
―――白! あなたのせいでっ!
ああ、あの時に浴びせられた罵声。その声が聞こえたということは、もう夢から覚めるころだろう。
「白!!」
愛歌のその焦り声で目が覚めた。
「なんだよ……」
「大変なの!」
愛歌はいつになく焦った表情でそう言った。
書いたことがあったか忘れたのですが、毎日19:10から複数わ投稿するときは10分おきに投稿しています。