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第九話:VS奪明のリコ(前編)

 12月になってずいぶん経った。もうだいぶ寒くなり、冬の匂いを感じる日が増えた。

 そんな今日も俺は住宅街の上を走り抜ける。


『春村市から北北東、埼玉県北部、利根川の近く』

「そこで発信機の反応があったんだな?」

『ええ。けれど、やっぱり途中で途切れてしまった。移動経路から居場所が大体まで絞り込めたから向かってみて』

「ああ」


 アガニレス・エージェントの一人、禰々子河童の居場所がやっと掴めたらしい。

 ここ二ヶ月、東京の治安は最悪だ。

 ずーっと、脱獄囚の暴動やグループ同士の抗争の鎮圧をして周っていたのだが、どいつもこいつもハイテクな武器を持ってる。全部リィナスエイジ製だ。被害者や死者を出さないように鎮圧するのには骨が折れた。手加減のレベルをミスれば俺だって殺されんだから。

 やっと、それらの原因となった犯人の一人が捕まえられるかもしれないのだ。少し張りきってしまいそうだし、前みたいに力み過ぎないよう気を付けないとな。

 それにしても……。


「遠くね?」

『そりゃ、50kmは軽く超える距離だもの』

「前みたいにヘリで送ってくれりゃ楽なんだけど」

『私が行くとまたあなたが戦いにくいでしょ? それに、あなたの方が速い』

「そうですか。あーあ、水闘気全力でぶっぱ出来りゃすぐなんだけどな……」


 だがそれでは着く頃には水闘気が底をつきかけるだろう。燃費が悪いのだけはどうにもならない。

 試作版Mark.5となったスーツの燃費も前よりはましになったが、決していいとは言えない。この調子なら着くころには半分くらいに減っている可能性もありそうだ。

 愛歌と他愛もない話をしながら、埼玉県を縦断していく。

 そして、最初に発信機の反応をキャッチした河川敷に着いた。真っ暗だな。スーツに付いてるライトを起動した。


「で、どうする?」

『そこから上流の方に向かって行ったのがわかっているわ。上空から辺りを観察できる?』


「もちろん」


 50メートルほどジャンプし、そこに水闘気で床を作り出し下を眺めた。


『住宅街から先は畑がひろがっているわね……』

「ああ、でも……」

『何、どうかした?』

「先の方で煙が見える。畑の中に工場かなにかがあるようだ」


 その地点の映像と地図に印をペックに付けさせた。


『よく見えないけれど、あなたがいうならそうなのかもね』

「で、だ。こんな夜中に工場動かすか? ふつう」

『ありえないとは言わないけれど、確かに気になるわね。丁度、消えた反応もそっちに向かっている。調べてみる価値はあるかも』


 この距離なら問題ないだろうと思い、水闘気で一気にそこまで駆け抜けた。

 近くの木に乗り、工場を観察する。


「武装した見張りがいる、しかもリィナスエイジ製。ビンゴだな」

『やったわね! さーて、ペック? 頼んだわよ』


 ペックが内部構造をスキャンしていく。


『見つからず忍び込めそうな入口をいくつかピックアップしたわ。好きなとこ選んで』

「……」

『白? 聞いてる?』


 その声が聞こえるまで、あることに気を取られていた。


「なぁ、愛歌……」

『ん?』

「なんでこいつらみんな、眼がないんだと思う……?」

『え? ……ヒッ……』


 愛歌も気づいたらしい。

 ここから見える人間、その全員が目に血の滲んだ包帯のようなものを巻いている。そして……。


「眼のふくらみがない」

『ええ、眼球が、ないわね……』

「で、普通に仕事で来てるんだ?」

『今答えが出るわけないでしょ……? とりあえず、中に入って調査して』

「了解」


 霊術で警戒しながら1つのダクトに入り込んだ。

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