第十七章「明の夢」
明は白い霧の中に立っている。目の前に一郎がいる。
「明、ぼくにはやらなければならないことがあります。そのためにアメリカに行きます」
「一郎さんのご両親を救うための戦いに行かれるのですね。あたしも一郎さんの妻として、最大限の協力をいたします。でも、これって『夢』の中でのやりとりなんですよね? 目が覚めれば忘れてしまってる」
「そうです。現実では***的に**されていて、『夢』でしか伝えられないことです」
「あたし、あたしは何でもやりますよ! 一郎さんの敵なら、あたしのイグナの力を全開にして灰も残らないくらいに焼きつくしてやる! **委員会の規則を破ったって平気なんだから」
「ストップ、明。それで十分です。明の気持ちは十分に受け取りました。でも『戦場』は太平洋を隔てたアメリカ。**委員の明のパスポートでは行けません。ぼくと、助っ人を買って出てくれた國分くんとで解決します。明は、待っていてください」
「待ちます。あたしは一郎さんを待ちます。いつまでも。あたしは一郎さんを愛しています」
「ぼくも明を愛しています。明はぼくにとって人生で一番大切な人です」
「ああ、一郎さん、一郎さん!」
明の目から涙が流れる。
さらに夢は続く。
夜の倉庫街のようなところで、一郎が巨大なDQ獣と戦っている。三人の少女とともに。DQ獣は海坊主のような姿で真っ黒な触手のようなものを次々と繰り出してくる。その触手を一郎が金属バッドで叩き落とす。触手は砕けて黒い煙となる。
少女三人は**委員だ。小柄な金髪の子が背丈より長い杖を両手で、ぶんと振うと、杖の先端から真っ赤な火球が打ち出される。さらに、ぶん!ぶん!と杖を振るって、二発、三発と連続で。火球は次々にDQ獣に命中して爆発する。この子はイグナだ。あたしと同じイグナの**委員。後方で青い霧を生み出している、大柄で黒髪の子はアクアの**委員。青霧のカーテンで味方を包み込み、DQ獣が吐き出すDQ素から防護している、もう一人の黒人の子は? 細身でスタイルがいい。モデルさんみたい。「***!」と鋭く叫んで突き出した右手から青白い稲妻が走り、DQ獣に突き刺さる。さらに左手からも稲妻。この子、電気を使うんだ。マナを電撃に変える**委員がいるなんて。でも、でも、がんばれ、皆! がんばれ、一郎さん!
チャンネルが切り替わるように画面が変わる。
一郎と三人の少女たちが色とりどりのネオンが煌めく夜の歓楽街を歩いている。新宿歌舞伎町とか、池袋西口みたいな感じ? でも表示はすべて英語だ。ひときわ鮮やかに赤く「BROTHEL」とネオン看板が掲げられた建物へと一行は入っていく。知らない英単語なのに「娼館」という言葉が明の脳裏に浮かぶ。「娼館」て、つまり「遊郭」? どうして一郎さんがそんなところへ?
画面が変わる。
白い壁と天井の、病室みたいなところにベッドがあって、一郎が横になっている。眠っていて、左腕に点滴を打たれている。一郎さん、お怪我なさったの? それともご病気なの?
ベッドの横のスツールに、なんか、でっかいおばちゃんが座っている。おばちゃんのお尻の巨大さと相対的に小さなスツールがアンバランスで、お相撲さんが蹲踞してるみたいに見える。おばちゃんは真っ黒なゴシック風のドレスを着ていて、長く伸ばした髪は紫色だ。一郎さんの頭をなでなでしてる。
「アクアの魔導*は取り戻した。地下**館へ収めたから、焚*隊にも手は出せない。ありがとう。イチロウ。地下**委員会を代表して感謝する。それにしても、あんたは女性に対して相当に不器用なようだねえ。お礼に『カーマ・スートラの福音』を授けよう。日本に帰った後、『妻』に出会ったら…」
そこで唐突に夢は途切れる。明はより深い眠りの中へと沈んでいく。




