【第35回】第三幕・電撃(11)決着後に雨が降る…………#266〜#269
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#266■同・敷地の中央辺り
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仁王立ちになり、天を仰いでいるゴールドス
大王。
クリムゾンX「勝負はついたようだな」
ゴールドス大王「(目を見開いて)キィィーッ、よくもやって
くれたわね」
どこからか金属的な飛行音が聞こえてくる。
空を見上げるクリムゾンX。
倒れていた灰坂、気を取り戻す。
団子状のままの宇宙船が飛んでくる。
ゴールドス大王の前に着陸し入口が開く。
ゴールドス大王「(キッと睨んで)覚えてらっしゃい、クリム
ゾンX。この借りはきっと返すわ! おさら
ばよ」
と、乗り込もうとするゴールドス大王。
すぐさま追いかけるクリムゾンXの背後にレ
イナの絶叫。
振り向くクリムゾンX。
鉄塔の骨組みが次々と壊れ、バランスを失い
倒れそうになる。
鉄塔のほうへ駆け出すクリムゾンX。
入口が閉まると光の玉となり、離陸する宇宙
船。
レイナ「助けてー!」
梯子に飛び上がると、レイナを抱きかかえる
リムゾンX。
さらに傾く鉄塔。
レイナを抱いたまま大きく飛んで、着地する
クリムゾンX。
次の瞬間、勢いよく倒れる鉄塔。
空の彼方に消える宇宙船。
頭を押さえ立ち上がり、うつろな目で状況を
見ている灰坂。
レイナの肩を掴んで、しっかり立たせるクリ
ムゾンX。
クリムゾンX「遅くなってすみません」
エレナ「いいの、クリムゾンX。(微笑んで)命の恩
人ね、ありがとう」
クリムゾンX「礼には及びません。地球の平和を守るのが私
の使命ですから」
レイナ「はい?」
マントをひるがえし駆け出す。
レイナ「……X」
突然、立ち止まり戻ってくるクリムゾンX。
クリムゾンX「忘れてました。(紙切れを差し出す)これ」
レイナ「(受け取り)なんですか?」
クリムゾンX「はい、請求書です! 助けてもらって、タダ
って事ないでしょう」
レイナ「へっ?」
再び走り出すクリムゾンX。
紙切れを開くエレナ。
請求書の文字、金額の欄に“LOVE”と書
いてある。
レイナ、視線を戻すとクリムゾンXはもうい
ない。
大粒の雨が降り出す。次第に強くなり……。
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#267■どこか真っ暗な場所
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前も見えないくらいの土砂降りの雨。
その中をフラフラ歩いているレイナ。
レイナ「X・・どこにいるの?」
突然、ぬかるんだ地面から泥にまみれた手が
飛び出しレイナの足首を掴む。
レイナ「(絶叫)キャーーーーッ」
その場に倒れたレイナの足を離さない泥まみ
れの手。
レイナの絶叫が続く。
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#268■エレナの部屋・寝室(深夜)
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ベッドから跳ね起きるレイナ。
顔中、汗が噴き出ている。
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#269■大学前通り(翌朝)
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ショルダーバッグを斜めにかけ、雨上がりの
歩道を歩いている健。
レイナのポルシェが健の横に止まり、ウィン
ドウが開く。
レイナ「今日は自転車じゃないのね?」
健、立ち止まりレイナを見る。
レイナ「乗ってく?」
健「いや、いいよ」
レイナ「そう」
二人、しばし沈黙。
そして、同時に話そうとして気まずくなる。
健「…どうぞ」
レイナ「そっちから先に……いえ、私から言うわ。あ
なたの事、誤解してたわ」
健「誤解って?」
レイナ「クリムゾンXの正体は……あなたでしょ?」
健「は? 何を言うかと思ったら」
レイナ「とぼけないで」
健「俺はヒーローじゃない」
レイナ「どうして隠してたの?……まあ誰でも隠すわ
ね」
健「違う」
レイナ「もう、頑固ね」
健「そっちこそ」
レイナ「まあいいわ。(ポケットから折り畳んだ紙切
れを出し)これあなたに返すわ。いや、クリ
ムゾンXに返しといて」
受け取る健。
あの時の請求書である。
走り出すポルシェ。
紙切れを開く健。
LOVEの前に“I”、後ろに“YOU”が
書き加えてある。
健、遠ざかるポルシェを見送る。
ポルシェのドアミラーに映る健の姿、段々小
さくなる。
※次回は、いよいよ最終話です。