【第12回】第二幕・追撃(01)重大な秘密…………………#083〜#086
●主な登場人物
【紅沢健】大学3年生。頭の中にノイズが走ると重大な事件の予兆を感じる。実は…。
【白鳥レイナ】大学3年生。少々気が強いが美人。男子学生たちが憧れるマドンナ的存在。
【白鳥友蔵】レイナの祖父。あらゆる学問に精通している博士。最近、新物質から“イーオン・リング”を開発した。
【黒原雄司】大学3年生。父親は会社社長。レイナに気があるが、相手にされない。
【ゴールドス大王】ある物を手に入れるためにクルール星から地球に来た。金色の肌に派手な衣装をまとった“おネエ系”宇宙人。
【ブロンズン】ゴールドス大王の部下。レイザーガンを操る。銅色の肌にコウモリのような耳と翼を持ち、飛ぶことができる。
【シルバード】ゴールドス大王の部下。銀色に輝く角張ったボディを持つロボット。
【黒原宗輔】雄治の父親。黒い噂があるクロハラカンパニーの社長。白鳥博士の研究を狙っている。
【灰坂昭彦】特別捜査課の刑事。勘が頼りの捜査がモットー。
【茶山陽平】特別捜査課の新米刑事。どこか抜けていて刑事らしからぬ言動もある。
【紺野理恵】レイナのクラスメイト。
【クリムゾンX】深紅のコスチュームに身を包む正義のヒーロー。
——————————————————————————————
#083■白鳥博士の家・医務室(翌朝)
——————————————————————————————
首から聴診器を下げた白衣の博士、窓際で外
を見ている。
上半身裸でベッドに眠っている健。
顔の傷に絆創膏が貼られ、首から胸や腕には
包帯が巻かれている。
カップを2つ持って入ってくるレイナ。
レイナ「コーヒーは、どう?」
白鳥博士「(振り返り)もらおうか。(受け取り)おま
えをここに呼んで良かったかのう?」
レイナ「(椅子に座る)今さら良いも悪いもないわ。
彼が私の名前を言ったからでしょ。おじいち
ゃんが慌てて電話してくるから、一応心配し
てきただけだから」
白鳥博士「一応か、冷たいのう。わしが彼の傷を治療し
ている間も、うわ言で名前を呼んどったぞ」
レイナ「私をおいて逃げたから、夢の中で懺悔してた
んじゃないの」
白鳥博士「何か事情があったんじゃろ」
レイナ「どんな事情?」
白鳥博士「さあ……」
レイナ「…でも分からないわ。どうして遠く離れた所
に倒れていたのかしら。しかもこんなに傷だ
らけで……あの後、奴らに連れていかれたと
か…」
白鳥博士「うーん、どうかのう。…ところで、彼はレイ
ナの(小指を立て)なんじゃろ?」
レイナ「えー? やめてよ、おじいちゃん。違う、違
う、同じ大学の…」
健の小さく呻く声。
白鳥博士「(健を見て)おっ、どうやら意識が戻ったみ
たいじゃ」
レイナ「(立ち上がり)じゃ、私帰るね」
白鳥博士「え? 声をかけていかないのかい」
レイナ「私がここにきたことは、彼に言わないでね」
白鳥博士「なんでじゃ?」
レイナ「なんででも」
白鳥博士「レイナ…」
レイナ「はい?」
白鳥博士「あそこに最後までいたことは、誰にも言わな
いほうがいいぞ」
レイナ「どうして?」
白鳥博士「マスコミが押し寄せる」
レイナ「でしょうね」
白鳥博士「…レイナ」
レイナ「今度は何?」
白鳥博士「ドアは閉めてってくれ」
レイナ「はい、はい」
レイナ、ドアを閉めて出ていく。
白鳥博士「ふぅ、誰に似たのやら」
レイナ「(部屋の外から)誰でしょうね」
苦笑する博士。
——————————————————————————————
#084■同・表
——————————————————————————————
ドアが開き出てくるレイナ。
ポルシェに乗り込み走り去る。
離れた所でバイクに跨り、それを見ている雄
司。
雄司「(博士の家に目をやり)………」
——————————————————————————————
#085■同・医務室
——————————————————————————————
ベッドに腰をかけたままで博士の診察を受け
ている健。
白鳥博士「……そういや自己紹介がまだじゃったのう。
わしはレイナの祖父で白鳥友蔵じゃ。レイナ
から聞いたが君は、えーと、紅沢…」
健「…健です」
白鳥博士「うむ。(聴診器を外し)異状ないようじゃ。
それはそうと昨日はえらい騒ぎだったらしい
のう。ニュースでも話題になっておる」
健「ええ……」
白鳥博士「わしが思うに……奴らは人間ではないようじ
ゃ」
健「人間ではない?」
白鳥博士「(微笑して)君も気づいているはずじゃ」
健「えっ?」
白鳥博士「説明しよう。向こうの部屋まで歩けるか?」
——————————————————————————————
#086■同・コンピュータールーム
——————————————————————————————
メインのパソコンと壁にあるいくつかのディ
スプレイに複合商業施設『ブルーノア』での
映像が流れている。
白鳥博士「昨夜、放映されたのを録画しておいた。あの
場所にいた誰かがTV局に提供したんじゃろ
う」
画面を見つめる健。
上下左右に揺れている画面。
破壊される建造物。
大王たちと戦っているクリムゾンX。
白鳥博士「これもレイナから聞いたが、奴らと戦ったの
はクリムゾンXとかいう男らしい」
健「そうですか」
と、ゆっくり歩き室内を見回す。
白鳥博士「…この状況を見る限り、おそらく奴らは地球
外生物じゃろう」
健「(振り向いて)地球外生物? ああ、それじ
ゃこのクリムゾンXもですか?」
白鳥博士「いや、彼は違うな」
健「(目をそらす)……」
白鳥博士「その理由を言おうか。こう見えても、わしは
博士であり医者でもある。自慢じゃないが、
研究分野は多岐にわたる。君の傷痕が気にな
って調べたんじゃが、地球には存在しない物
質が検出された」
画面にはレイザーガンを乱射しているブロン
ズン。
白鳥博士「たぶん、このレイザーの成分じゃろう」
健「それが俺と関係が?」
白鳥博士「君には重大な秘密があるね。普通の人間とは
違う能力を持っておるじゃろう?」
健「……」
白鳥博士「(画面を指し)ほら、ここじゃ。このクリム
ゾンXが受けた傷が君にもある。(健をじっ
と見て)クリムゾンXは君じゃな?」
健「いや、俺は…」
白鳥博士「それともうひとつ、いくつも穴が空いた深紅
のボディスーツは保管しておるよ」
健「(あっ)……」
白鳥博士「隠さずとも口外はせん。もちろんレイナにも
な」
観念して頷く健。
健「それでその…奴らが地球外生物という根拠は
なんです?」
白鳥博士「うむ、君を助けるちょっと前に…」