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第二話 軍師任命

続いて第二話です。


新社長・曹操そうそうとの面談。

何も起きないはずはなく……?


どうぞお楽しみください。

「しょ、商品開発部、プログラミング課、保守点検係チーフ、生田いくたじゅん入ります」

「どうぞ」


 緊張しながら扉を開けると、朝見た古代中国風鎧の曹操そうそう孟徳もうとく(自称)と専務の玄橋くろはしさんが面接官のように座っていた。

 さっきは壇上だったから、『オーラ凄いなー』くらいしか思わなかったけど、目の前に座ると、これもう圧だよ!

 これじゃあ転生してきた曹操ですって言われても信じちゃうよなぁ……。


「生田、と言ったか」

「は、はい!」

「お主、昨日寝ておらぬな?」

「……は、はい……」


 初対面でわかるくらい、俺の顔やばいかな……。


「……玄橋殿の言う通りだ。足りぬ人手を居る者に無理をさせて補うなど、愚行の極み……!」

「ご理解いただき、ありがとうございます……!」


 怒るとまた圧が凄い……!


「あの、すみません……」

「いや、悪いのはお主ではない。それを強いたこれまでの主に責がある。むしろそんな中仕事を放棄せず続けている事は称賛に値する」

「ありがとうございます……」


 あ、やばい。

 何か泣きそう。

 上司から優しい言葉かけられるなんていつぶりだろう……。


「では生田君。社長に職場の現状を報告してください」

「は、はい!」


 専務の言葉に、俺は考える余裕もなく、片っ端から話し始める。


「まずですね、社長が仰った通り人手が全然足りてません。今の業務量なら倍は人員がいないと回りません。

 というのも私達の仕事は開発してリリースしたプログラムに不具合が出た際に対応する部署なのですが、とにかく開発係の仕事が杜撰なんです。

 クライアントの仕様書そのままでしか作っていないので、その想定外の操作を行うとフリーズしたり暴走したりして、リリース翌日にうちに仕事が回ってくるなんてざらなんですよ。

 なのに営業さん達は『うちの開発は仕事早いですから』とか言ってどんどん仕事を受けてきて、だから開発係の仕事が雑にならざるを得ないというのもわからなくはないんです。

 そもそも年間の業績目標がめちゃくちゃなくせに遵守を強要されて、特にその槍玉に挙げられるのは営業さんですから、仕方ない部分もあるとは思います。

 とはいえ株主がいる以上業績不振で株価が下がったら、一気に株を売られて会社の存続が危なくなるという事は理解してます。

 だから、少しずつでもいいので、それぞれの部署の人手を増やしてもらえたらと思うんですが……」

「……」


 あ、やばい……。喋りすぎた……!

 こんなのブチギレるよね……!

 やっぱり物理的に首が飛ぶ!?


「お主は自分の目の前の問題点だけではなく、この組織全体の問題点が見えておるのだな」

「え? あの、いや、そんな大層な事は……! じ、実際にどうなのか確認したり検証したわけではないので……」

「そのような事は後からすれば良い。大事なのはそれを感じられるかどうかだ」

「は、はぁ……。ありがとうございます」

「気に入ったぞ生田。お主の進言通り、必要な人員の確保を約束しよう」

「あ、ありがとうございます!」


 良かった……! 曹操良い人じゃん!

 考えてみれば三国志の中でも、利益や効率を重視して、革新的な政策を打ち出していたっけ。

 良かった、前の社長より全然うまくいきそう……!


「そしてお前の仕事の引き継ぎが終わり次第……」


 へ? 引き継ぎ?

 引き継ぎって何の?


「我の直属の軍師として仕えよ」


 は、はあああぁぁぁ!?

 た、たかが末端の係の、係長ですらないチーフの俺が、社長直属!?

 しかも軍師!?

 無理無理無理無理!


「そ、そのような大役は私にはむ、難しいかと……」

「何だ? 我がお主なら出来ると判断して登用しようとしているのだ。それを疑うと言うのか?」

「……」


 これ断ったら、物理的にじゃなくても首が飛ぶやつだ……。

 そうだよ、曹操は優れた人材なら身分を問わず登用するスタイルの人だった……。


「……謹んで、お受け、いたします……」

「うむ、楽しみにしておるぞ」


 大変な事になった……!

 今やってる仕事をやりながら内容を引き継げるようにまとめて、新しく入る人向けにマニュアルを作って、それと同時に会社全体のデータ集めもしなくっちゃ……。

 もう一日、会社泊かな、ははは……。


「ご苦労であった。今日はこのまま帰って良い。車を呼んでやれ」

「かしこまりました」


 え、か、帰って良いの!?

 確かに一山越えてはいるけど、まだやらなきゃいけない事が……。

 それに車って、タクシーで帰れるの!?

 これはあれかな……。徹夜の途中で寝落ちしてて、まだ仕事終わってないとかそんなオチ……?


「何を呆けた顔をしておる。夜戦の後や夜回りの者を労うのは当然の事だ。身体を休め、万全の態勢で仕事に臨むが良い」

「あ、あり、ありがと、ござい、ます……!」

「泣かんでも良い。よく休み、よく励めよ」

「……はい……!」




 こうして俺は曹操新社長の元で働く事になった。

 だが俺はわかっていなかった。

 曹操の下で働くという事がどういう事なのか……。

読了ありがとうございます。


三国志お好きな方には早々にバレたかもしれませんが、生田いくたじゅんの名前は、曹操そうそうの軍師・荀彧じゅんいくから取っています。

なお専務の玄橋が、曹操を見出した橋玄きょうげんから、というのがわかった人は相当のフリーク。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 どうなるか楽しみですね! ☆⌒(*^∇゜)v
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