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人生ゲーム2

 白熱する人生ゲームは、それこそ白熱し過ぎて殺伐とした雰囲気を室内に漂わせ、今では殺し合いでもしているのかと言いたくなる様相だ。寒気すらする程に。

 そんな中でも心底人生ゲームを純粋に楽しんでいるのが、新加入したミオンである。超越者と呼ばれていただけはあり、その精神のタフさには脱帽するしかない。

 俺はその状況でゲームプレイ者でも唯一の客観的思考を保ち続けている人間になるが、ピリピリと肌を突き刺すような空気に耐えられなくなってきている。もう限界が近いとしか言えない。


「やりましたよー! ドラゴンを倒して英雄になったですぅ! 褒美としてプレイヤー全員から金貨五十枚が貰えますぅ!」


「「「「「「「「……………………………」」」」」」」」


「子供の出産祝いに貰った金貨も合わせると、総資産が金貨二百枚を越えましたよー!」


 この燃え盛る火災現場に油を放り投げるような所業を嬉々としてやったのは、満面の笑みを浮かべる英雄になったテティス。今やドラゴンを倒してウキウキの上機嫌だ。

 それに反して額に青筋を浮かべるのが、俺とミオンを抜いた面々になる。意外にも途中からアキとフユでさえも白熱し始め、ガッツポーズをしているテティスを睨みながら唸る始末。

 勘弁してくれ、これ以上の燃料投下はやめろ、そんな風に内心で必死に願うものの、テティスの次にサイコロを振ったミオンのせいで場が更に悪化する。


「ヨッシャア! 王様になってパレードをやる、プレイヤー全員が王様に金貨二百枚を支払うだそうだ!」


 最早独走状態に入ったミオンは、手元に集まった金貨の山に有頂天だ。それに反比例して、俺の胃がキリキリと音を上げている。


「姫であるワタクシの上にミオンが立つと言うのか………?! ゆ、許せん。決して許しはせんぞ」


「はわわわ。お、落ち着いて下さい姫様、これはゲームですよ。あくまでも仮初めの人生を楽しむゲームなんです」


「女王の妾と対等になったつもりなら現実を思い知らせてやるわ。あらゆる間隙の無い権謀術数を仕掛けて出し抜いてみせるのじゃ」


「ワタシがこんな貧乏を極めるなんて………!? あり得ない、これは夢か幻に決まってるわ」


「ぼ、僕とした事が手を抜いてしまうなんてね。少し………そう、少しだけ本気を見せる必要があるのかな」


「アタシの金貨がぁぁ………。冒険者になってコツコツと貯めた金貨がぁぁぁ………」


「フシャア!」


「グルル!」


 まさに一触即発、戦争が始まる直前、目の前の光景がそんな感じである。裸足で逃げ出したい気分だ。

 その状況で次にサイコロを振るのが、俺。ゴールまで、あと五マス。つまり、そのサイコロの出目が五以上なら俺がゴールに辿り着ける訳で、このゲームは誰かがゴールに到達した時点で終了となるのだから、俺が五以上を出してしまえば戦争を回避出来るという事だ。

 俺はメンバー間での争いが起きないよう必死に願いつつ、サイコロを転がした。


 テーブルの上を全員が険しい顔つきで見詰める中、リズミカルに転がっていたサイコロが止まる。


 俺は怖くて目を閉じてしまっていたが、メンバー全員の驚きの声によって思わず閉じていた瞼が開く。


 テーブル上のサイコロに自然と視線が向かった。


 出た目は、五。


「神は味方だった! 均衡は保たれたのだ!」


 一人だけ違う意味で喜ぶのは俺だけで、その他の面々は手元に残っている資金を数えて一喜一憂している。誰も俺のゴールを誉める事などない。

 しかし、血で血を拭う凄惨な争いは免れたのだ。俺の立派な功績であると言っても過言ではなく、であるからこそ内心で自分を褒め称えた。

 だが、そんな胸を撫で下ろす現状に、ミオンが爆弾を投下する。


「ハハハハハハ! 私が一番だーー!! 跪くがいい、下民どもよ!!!」


 有頂天、絶好調、唯我独尊、そう表現するに相応しい態度で勝ち誇りながら、ミオンは自身の勝利に叫んだ。その瞬間、メンバー達から陽炎のようなオーラが吹き出しているのが見えた気がする。

 あ、これは駄目なヤツだな。咄嗟にそう心の中で呟いた俺は、そそくさとリビングを後にした。


「うわぁああああ!? 王様の私に何をするぅぅぅう?!」


「「「「「「革命に決まっている!」」」」」」


「フシャァア!」


「ァオオオオオン!」


 下克上が始まった事を背後で叫ぶミオンの悲鳴で悟り、次いでミオン以外の者達からの言葉で改めて確信した俺は、南無三と一言口に出して寝室に入った。

 きっと現状のミオンでは簡単にズタボロにされてしまうのだろう。確かに超越者と呼ばれる存在のミオンだが、それは俺にテイムされる前の話にしか過ぎない。現状の彼女は、冒険者としては優秀だと評価される程度なのだ。


 あぁ、寝室にまでミオンの悲鳴が聞こえてくる。何をされているのかは見ていないのではっきりとは分からないのだが、聞こえる悲鳴から察するに電気アンマでもされているのだろう。以前、俺がタレイアのイタズラを注意する時にやった技なのだが、それを見ていたメンバー間で一時期流行っていたのだ。その電気アンマをされているのは恐らく間違いない。


 あぁ、今度は四の字固めに移行したのだろう。必死に畳を叩く音が聞こえるし、足がぁあ、足がぁあ、とミオンが悲鳴を上げているので間違いない。あれもタレイアのイタズラを注意する時にやった技で、電気アンマよろしく一時期メンバー内で流行っていたのを覚えている。


「煽るから悪い。煽ったりしなけりゃ被害に遭わずに済んだものを」


 現実とは無情なものなのだ。ままならぬものなのだ。非情なものなのだ。許せとは言わん。だって自ら蒔いた種なのだから、当然自ら刈り取って欲しいと思う。

 ただ、骨は拾ってやるからな。それぐらいは主人としてやってやるからな。

 聞こえ続ける悲鳴を耳にしつつ、俺はそう決心しながらベッドに潜り込む。


「………寝るか」


 久しく独りで寝る事は無かったが、丁度いい機会だ。このキングサイズのベッドに独りというのは至極贅沢で寂しく感じるが、今はそれも中々心地良く感じる。

 ミオンの悲鳴を子守唄にして、俺はゆっくりと瞼を閉じた。いい夢が見れそうな気がする。

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