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力を求めて

 十一階層に出て直ぐ右に進んでいると、案外近くに危険とされる沼地が存在していた。まぁ今は真冬なので、当然その沼地も一面スケート場のように氷ついているがそれでも沼地は沼地である。

 見た目は神秘的で実に綺麗な光景だ。氷っている事でキラキラと太陽の明かりを反射しており、積もり始めた雪と相まって厳かな雰囲気すら感じる。


 そんな光景に感嘆するものの、レベル上げの標的となるモンスターが見当たらない。掲示板に書かれた情報が確かなら、此処にコモドオオトカゲのような姿をした全長12メートル程の巨大なトカゲが存在する筈なのだが、そのモンスターどころか他のモンスターの気配一つ感じないし見当たらない。


「居ないね。冬だと別の場所に移動してるのかな?」


「ぅ〜ん、僕とアグライアは地上のモンスターに詳しくないから分かんないや。ヘルとブリュンヒルデなら分かるんじゃない?」


「いえ、流石に私と姫様も未開地のモンスター全てを知っている訳ではありませんので。と言うより、知らないモンスターの方が多いのが事実です」


「そうだな。ワタクシ達が地上に住むからと言って、地上に存在する全てのモンスターを知っている訳ではない。寧ろ知らないモンスターの方が多いくらいだ。

 どうする、マスター?」


「トカゲってのは基本変温動物だからねぇ………寒いところが何より苦手な筈。まぁモンスターだから地球のトカゲとは違う体質なのかもと期待して来たんだけど、その辺は一緒って事なんだろう。

 多分、その辺に穴蔵とかあって冬眠でもしてるんだろうから、その穴蔵を探せばいいんじゃないかと思うんだ。だから穴蔵を探してみよう」


「12メートルのトカゲが入れる穴蔵って………そんなのあるの? 僕が思うに、そんな都合のいい穴があるとは思えないんだけどぉ」


「そうね。ワタシもタレイアに同意するわ」


 確かにタレイアの言う通りで、都合の良すぎる話ではある。しかし、その好都合な条件が揃っているからこそ、この沼地周辺に生息していると考えれば妥当な現実だと言える訳で、そうなると必然的に冬眠する為に都合のいい穴蔵があって、そこでトカゲ達が集団で越冬の為に集まって眠りについている可能性が高い筈だ。

 だが勿論、渡り鳥のように移動している可能性もあるので、その時はこの探索も無意味になってしまうが、その時はその時で仕方ないとして、別のレベル上げに最適な場所に移動すればいいだけだ。


「まぁ一応探してみようよ。無駄だったらその時は諦めればいいんだし」


「ふむ、まぁそうだな」


「でしたら探すだけ探してみましょうか」


 駄目で元々、という感じの雰囲気で一応意見が纏まり、皆それぞれに周辺の状況を探ってみた。積雪もまだ30センチ程なので、探索で歩くのに苦労する程ではない。スキルの精力増強や無尽蔵もあるし、そもそも個体レベルが上がった今の俺達の体力は尋常ならざるものなので、それこそ苦に感じる事なく歩ける環境下だ。強いて言えば、寒いのが少し辛いぐらいである。

 歩く度にザクッザクッと響く小気味良い音に癒されながら、俺達は穴蔵、つまりは洞窟のような物を探して探索し続けた。沼地だけあって木々は少ないので、見通しは悪くない。森の中より遠くまで目で確認出来た。


 そんなこんなで探索する事一時間と少し、俺達はそれっぽい洞窟を発見する。洞窟の大きさはメンバー全員が横一列に歩いて進んだとしても余裕なくらいで、これなら沢山のトカゲが集まって越冬していてもおかしくはないと思える規模だった。

 ただ少し変わっているところがあり、それは洞窟の壁面が妙に傷だらけな事。ピッケルなどを使用して穴を広げたのかと思わざるを得ない傷が無数に付いており、まるで人工的に造った洞窟のようだ。


「この洞窟を見て、皆はどう思う?」


「そうね。トカゲのモンスターが穴を広げたのかもしれないわ」


「僕もそう思う。この場所は未開の地に入ってから結構進んだところだし、人が此処まで入って来てるとは思えないからねぇ」


「ですです。モンスターが広げた穴としか思えませんねー」


 アグライア、タレイア、テティスの三人が確信した様子で持論を述べた。それに乗っかって、ハルちゃんやナっちゃんも頷いてみせている。

 そんな反応を見せるメンバーとは違って、ヘルとブリュンヒルデの二人だけは小難しい表情で壁面の傷を指先でなぞっていた。それこそ何やら悩んでいるかのような雰囲気で。


「どうかした?」


「うむ。……全長12メートルのトカゲが付けた傷にしては、少し小さ過ぎはしないだろうかと思ってな」


「私も姫様と同様の印象を感じました。標的のトカゲが付けた傷なら、もっと大きく深い傷跡が残ると思われます。なのにこの壁面に残る傷は、どれもこれも小さい。僅か10センチ程でしかありません」


「そう言われると確かに変だね」


 説明されて初めて気付いたが、確かにヘルとブリュンヒルデの言う通りだ。全長12メートルにも達するトカゲの爪なら、きっと馬鹿デカイ筈なのに、残されている爪痕が小さい。


「もしかしたら違うモンスターかも? いや、でも強大なモンスターが生息する場所に敢えて棲む生物が居るのかなぁ?」


「その疑問も当然だと思う。ワタクシも同じ疑問を抱いたからこそ悩んでおったのだ。ブリュンヒルデはどうだ?」


「私も同意見です。しかし、それを確認する為には中に入って確かめるしかないかと」


「ふむ。それも道理だな。……マスターはどう思う?」


「まぁそうだね。結局は進んでみなければ分からない訳だし」


 何か別のモンスターが元々小さな洞窟を拡張して大きくしたとして、たまたま此処に訪れたトカゲが自身の棲みかとするのに都合が良かったので先人を押し退けたという可能性もある。

 しかし、そうやって幾つ推測を重ねても結局は自分達の目で確認しなければ意味はない。机上の空論というヤツだ。

 故に、俺達は意見を擦り合わせた結果、進むという選択肢を取った。洞窟の外で何が出て来るのか待つという方法もあるが、この寒さの中では過酷すぎるし何より迂遠すぎるからだ。


 そうして明かり用の松明などを用意した後、俺達は巨大な洞窟へと足を踏み入れて行く。中は外と違って少し暖かい。1度、或いは2度ぐらいの違いしかないのだろうが、風が無いのでその若干の違いが大きく感じられた。


「うぅ〜暗くて怖いですぅ」


「暗視のスキルがあるからマシな筈だけど、それでも見えない?」


「スキルのお陰で見えはしますけどぉ、怖いのはやっぱり怖いんですよー」


「ふふん。テティスはまだまだだねぇ。僕は全然怖くないよぉ」


「ウフフ。それはワタシ達が地底国出身だからでしょ? テティスはドワーフなんだから仕方ないじゃない」


「いやいや、それは女としての器の大きさの違いさ。僕程に女として完成されていれば、少しぐらいの暗さなんかへっちゃらになっちゃうのさ」


「夜の方ではマスターに負けっぱなしなのによく言うわね」


「なっ!?!? そ、そそそそれは関係無いじゃないか!」


「関係あるわよ。因みに、ワタシの勝率は二割まで上がったわ」


「なん………だと?! 僕は全敗してるのに、アグライアはそこまで勝率を上げていたなんて……!?」


 アグライアとタレイアの二人が夜の方に話の内容を変えた瞬間、他の女性陣全員の顔色が真っ赤に変化した。テティスとはまだそういう関係になっていないし彼女自身がそういう事に関して未経験なので、ヘルとブリュンヒルデより更に増して赤くなっている。まるで茹で蛸だ。

 その反面、顔色どころか表情も分からないハルちゃんとナっちゃんの二人は、アグライアとタレイアの会話が気になるのか少し彼女達二人に接近して更に詳しい内容を聞こうとしている。女性に年齢を尋ねるのはマナー違反なので知らないのだが、もしかしたらハルちゃんとナっちゃんは性が気になるお年頃なのかもしれない。


 ともあれ、そうやって会話が弾む中をひたすら進んでいると、洞窟の様子がこれまでとは一変した。真っ直ぐ一本道だった洞窟が、二つに分岐していたのだ。

 しかし、どちらに進むべきかは明確。右の方からグルグルとかグルルルルだとか、明らかに生物の声が響いてくるからだ。

 それ故、話し合いなど一切する事なく、その声のする方へと全員で進む。そして、標的を見付けた。しかも大量のトカゲが団子状態になっているところを発見したのだ。


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