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希少金属

 巨岩の目立つ一帯を探索し始めてから更に十日が経過した頃、本当に偶然なのだが目的の鉱石を発見する事に成功していた。

 発見したのは意外にも俺で、当初は妙に黒く変色した岩や地面に疑問符を浮かべるばかりで、その重要性に全く気付かないでいた。

 それで素直に仲間全員を呼んで疑問をぶつけた結果、タレイアが狂喜乱舞して鉱石の名前を叫んだ事で、漸くそこで自分が目的の一つである鉱石を見付けていたのだと理解した訳だ。


 その発見した鉱石の名は、黒鉄。タングステンより少し硬く、チタンよりも軽い物質らしい。

 まるで良いとこ取りしたようなこのファンタジー鉱石は、そのまま使用すれば普通の黒鉄として色々な物に加工出来るが、特殊な素材を用いて精錬した場合ではアダマンチウムと呼ばれる金属に変化するそうで、そうなるとオリハルコンに迫る程に希少な金属となるらしい。

 ただし、その特殊な素材というのがミスリルだそうで、その金属自体が希少なのでそもそもミスリルを入手する事が困難らしく、アダマンチウムを造るのは通常無理だという話だ。

 しかし、それでも一応は希少と言える部類に入る金属鉱石なのだから、その黒鉄を発見出来た事が充分な成果だと言っても過言ではないだろう。


「この黒鉄を使って武器とか防具を造ったら、きっと格好いいんだろうね」


 全身真っ黒な装備というのもかなりいいんじゃないかと思える。夜では目立たないだろうし、そう考えるとますます好ましい。

 そう考えながら何気無く呟いた俺の言葉に対して、何故かメンバー全員が不思議そうな表情を浮かべていた。何を言ってるの、とでも言いたげな表情だ。


「マスターは知らないのぉ?」


「知らないって何が?」


「この黒鉄の性質だよぉ」


「性質?」


 タレイアが全員を代表して尋ねてくるものの、俺は本当に何も知らないのだから答えようがなく、ただただ首を傾げるしかない。


「黒鉄はねぇ、製錬すると青く変化するんだぁ。だから黒いのは今だけって事だねぇ」


「え!? マジで?!」


「うんうん。マジもマジ、大マジだよぉ」


「それじゃあ……アダマンチウムになったら、その時はその時でまた変色するの?」


「いい質問だねぇ。実はそこが黒鉄の面白いとこで、鍛冶職人の腕が良かったら真っ白に変色して、腕が悪かったら緑色に変色しちゃうんだよぉ」


「スゲェ………! じゃあタレイアが製錬したら?」


「エヘヘヘ。それは楽しみにしててよぉ」


 余程に自信があるのか、背を反って大きな胸をこれでもかと強調するタレイア。その仕草でタレイアの鍛冶師としての実力が窺い知れると言えるだろう。

 それを証明するかのように、アグライアがそっと耳打ちしてくれた。その内容によると、ダークドワーフ界隈では三本の指に入る鍛冶師として有名で、王族から求婚される程の実力者だったそうだ。

 まぁ外見が現実離れした美しさを誇るタレイアなのだから、王族に求婚されるのは当然だとしても、それが鍛冶師としての実力を見込まれてという意味を含む求婚なのだから相当に腕が立つというのは察せられる。


「楽しみにしてるよ。ま、それは兎も角、先ずは黒鉄を採掘しなきゃね」


 どれくらいの採掘量が期待出来るのかは謎だが、それを確かめる為にも早速全員で採取を開始した。採掘する為の道具を用意しているので、それを使用しての採掘だ。

 しかし、本当に道具を中心に力作業の採掘をするという訳ではなく、殆どは土属性魔法を使用しての採掘になり、力作業という感じは全くない。魔力量の許す限りに魔法を行使して、ひたすら土を除いていくだけであり、要所要所での細かい作業には道具を使うだけだ。


 それ故、メンバー全員で交代しながら休み休みに掘り進め、心底楽しながら真っ黒な黒鉄鉱石をこれでもかと採掘していった。その量は二トンに迫る勢いで、それでもまだ沢山の黒鉄が採掘出来るだろうと思わせるこの場所には素直に驚かされた。

 実際、タレイアも黒鉄を一度にこれほど大量に採掘された例は稀だと言うくらいなのだから、此処を偶然発見出来たのは余程に幸運だったのだろうと思う。


 と、これまでの経緯をざっくり説明しているが、実はこの採掘の為に経過した日数は十日間を越えていたりする。鉱石を発見するのに二十日近く、そして採掘に十日間だ。つまり、一ヶ月もの期間を掛けて二トンの黒鉄を得た訳であり、決して楽々と手にした訳ではない。

 なので、そろそろ帰還するかと提案したのだが、その提案をするなりタレイアに両断されてしまった。勿論、俺としては充分に採掘出来たと思えるので反論したのだが、それでも尚タレイアは採掘の続行を希望したのだ。


 これには少し困ったというのが正直な感想。他のメンバーも疲れが見えてきていたし、そろそろ安全な拠点で休息を取らねば精神的な負担が怖かったからだ。

 疲労のせいで取り返しのつかない失敗をするのは絶対に嫌だし、そもそもそうなる前にリーダーとして判断しなければならない俺としては、この辺が潮時だと思うからこそ帰還を提案したのだ。


 しかし、まだまだ沢山採掘するべきだと主張するタレイアにもその主張の理由があって、それによると製錬する場合では一度に大量の鉱石を製錬するのが普通で、それは燃料代が馬鹿高いからなのだそうだ。

 製錬を簡単に説明すると、とてつもない温度に達する特殊な炉を用いて鉱石を溶かし、それによって純度の高く望んだ金属を得る事を製錬と言う。そしてその製錬で使用する燃料には、それ専用の燃料を使うのだ。


 その燃料が高価であって、炉の温度を高温にするまでにも大量の燃料が必要だし、その後も温度を維持する為に大量の燃料が必要になってしまう訳で、その関係で一度炉に火を入れたらその時に所有している鉱石を全て製錬させるのが普通らしい。そして更に言うなら、炉の火は決して消さないのがベストなのだそうだ。

 なので、効率を考えるならば採掘出来るだけ採掘して、一度に大量の製錬をしておいた方が経済的にも後々の鍛冶仕事を考えた時にも最も効率的らしい。


 と、ここまで力説されれば専門家じゃない俺達としては反論の余地など微塵も無く、故に疲労を考えて休息の時間を増やす事で騙し騙し採掘を続行するしかなかった。

 それで更に十日間を過ぎた頃、漸くタレイアから及第点を貰えた時には10トン近い黒鉄を得ていたのだから苦笑するしかない。

 事実、殆ど全員が疲労困憊で、採掘していた間もモンスターの襲撃は当然あって、それで倒したモンスターを解体して素材を得ていたアグライアくらいしか笑顔がなかった程だ。


 本当に元気なのは生産系のアグライアとタレイアだけであり、その他の面々は日中のうち休憩時間の方が多いくらいであった。流石に限界だったのだろうと思う。

 これには以前の旅よりモンスターが強かったせいもあるのだろうと、そう睨んでいる。襲撃してくるモンスターの体躯が平地よりデカかったし、そして何より素早くて油断も隙も無い奴らばかりだった。


 まぁ何はともあれ、タレイアから及第点を貰った訳なので、俺は当初徒歩で帰るつもりであったが、流石に限界だったので無理はせず、少し勿体無いが帰還の杖を使用して帰る事に決めた。

 そして帰還するなり一ヶ月は休息にすると宣言し、俺達は各々風呂に入った後は泥のように眠りについた。勿論、アキとフユは風呂を嫌がっていたのだが、どれだけ疲れていようが関係無いと断言して隅々まで洗ったのは言うまでもない。

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― 新着の感想 ―
ミスリルって装備に使われてるのを溶かして使うのは駄目なの?実は装備のミスリルは合金で、混じりっけ無しの純度1〇〇%のミスリルが必要ってこと?
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