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新装備

 アダマンタイトとは、或いはアダマンチウムとは、黒鉄とミスリルを同じ炉に入れ融かし、精錬させると出来上がる金属。その硬度はオリハルコンに迫り、その軽さは同じくオリハルコンに迫ると言われている。

 そして黒鉄そのものは鍛冶師の腕次第によって、色が青系統に変色すると言われており、腕が良い職人ほど黒鉄は青く輝く。その性質が受け継がれるせいか、ミスリルと合わせ精錬されて生み出されるアダマンチウムは、その色を鍛冶師の腕次第によって変色する事で有名な金属である。


 腕が良ければ白色に、腕が悪ければ緑色に、アダマンチウムはその色を劇的に変化させるのだ。


 とすると、俺の仲間であり唯一の鍛冶職人であるタレイアの腕をもってすれば、アダマンチウム製の武器防具は見事なほどに真っ白な純白の物となるのは必然。彼女の鍛冶師としての腕前から考えると当たり前の事なのだ。

 しかしその事実は、鍛冶師としてはその腕前を誇れる事象なれど、純白のアダマンチウム製の防具を身に着ける俺からすると、実に小っ恥ずかしい事この上ない。


「なんか違う。………なんかコレじゃない感が半端ないんだけど」


 純白の防具と剣を前に、俺はその美しくもあるがその美しい武器防具を身に着ける自分を想像して項垂れるしかなかった。どう考えても似合わないだろうと、そう思わずには居られなかったのだ。


「俺以外のメンバーだったら皆が似合うと思う。凛々しく厳かな雰囲気になって、きっと誰もが二度見する騎士然とした立派な戦士に見える事だろう。

 ……でも俺は、純白の武器防具の外見に負けちゃって、他人からすると滑稽な姿にしか見えないような気が……」


 いや、これはそんな気がするだとか生優しい話じゃない。まず間違いなく似合わないし、きっと第三者からすると思わず失笑してしまう類いだろう。


「しかし、これを造ってくれたタレイアに何か言えるかと言われれば……」


 もしも、この武器防具について一つでも注文をつけたりしたら、きっと物凄く不機嫌になるに違いない。剣に属性を付与してくれ、とかそんな話なら喜んで改良してくれるだろうが、外見に注文をつけたら殺されるかもしれん。

 完成した武器防具を渡しに来たあの笑顔が、一転して般若のような表情に変わったとしたらゾッとする。ただ殺されるだけでは済まないかもしれない。


「ジワジワと拷問されたりして………」


 『ボクの力作に不満でもあるのかい?』と、般若の顔でそう詰め寄ってくるタレイアが脳裏に過ぎった。手には金槌と赤く熱せられた金属製の棒を持った姿で。


「うんうん、ここは素直に受け取っておくのが正しい選択だな。……本当に拷問されたら敵わん」


 似合う似合わない以前に、オリハルコンに迫る性能を持つアダマンチウム製の武器防具を揃えられた事実を喜ぶべきなのだ。そう、それが正しい大人の判断というやつなのだ。

 そう冷静に受け止められたら、その途端に外見は気にならなくなった。まぁ完全にではないが、多少は本当にマシになった気がする。


 それより、大事なのは戦力増強になった事。オリハルコン装備を初めから身に着けていた面々は兎も角、その他の者達は全員が装備をアダマンチウム製に一新する事となった。

 この事実は大きな意味を持つ。これまでよりも接近戦で無茶を出来るようになるのだから、戦術の幅が大きく広がるのだ。

 特に壁役の俺やテティスは、その役割故にかなりの恩恵を受けるだろう。今までよりも頑丈で軽い装備のお陰で、これまでの戦闘より更に壁役として活躍出来る筈。そしてそれは他の役割を担うメンバーそれぞれに言える事でもあり、今回の新装備によって大幅な戦力強化になったのは疑いようのない真実だ。


「うんうん、そう考え始めると実に気分が良い。素晴らしい事じゃないか」


「ニヤニヤしてどうしたんで?」


「んぇ? あ、コブラとプロトポロスか」


「貴殿の気持ちは痛い程に良く理解出来る。吾輩もニヤケ顔が止まらんのだから」


 居間のテーブルに並べられた武器防具を眺めながらニヤニヤしていると、そこにコブラとプロトポロスが何時の間にか来ていた。

 どうやら新装備に浮かれ過ぎて、他者の気配に全く気付けなかったらしい。いくら此処が安心安全な拠点とは言っても、少し気を抜き過ぎだな。


「二人の方も満足出来る仕上がりだった?」


「勿論でさ」


「無論」


「二人は武器に属性付与させたりしたの?」


「いやいや、属性武器なんか夜闇の戦闘では目立って仕方ないんで、二本とも純正ですぜ」


「ふむ。コブラ殿は遊撃担当であるからな、その判断は的確でしょう。吾輩の場合は属性付与させても良かったのですが、妻との連携を考えると邪魔になりそうなんで、此方も純正のままにしときました」


「なるほどねぇ。迂闊に属性付与させると、確かに連携で困る部分が出てくるし、そう考えると純正のままが一番使い勝手が良いよね。

 そうなると、もしかして皆が純正のままだったり?」


「そうでしょうな。属性武器……世間一般で言うところのマジックウェポンは、実力の低い者ほど自身の足りない部分を補ってくれるという意味で重宝されますが、魔法も武器術も一流に達した者からすると寧ろ必要の無い類いになりますからな」


 属性武器は確かに強力な武器だという認識は正しい。魔力を込めるだけで武器に付与された属性を発動させ、術式に従う形で解放されるそれは、簡単に誰でも使用出来るので強力な兵器とも言えるだろう。

 だがそれは、未熟な者からにしたらの話。実のところ属性武器にはデメリットがあるのだ。


 例えば、魔力を込めるだけでファイアーボールを放つ剣があったとしよう。魔法を使えない者なら、剣という接近戦武器でありながら魔力を込めるだけでファイアーボールを放てる剣は、近から中までの間合いで活躍する貴重で強力な武器だと認識される筈だ。

 しかし魔法使いであれば、その剣を使用せず普通にファイアーボールを放つ方が、魔力消費が低く済むので効率的だったりする。そう、実は属性武器に付与されたその力を使う場合、普通に魔法を使用するよりも多くの魔力を消費するので、魔法使いからすると好んで使うような代物ではないのだ。


 ただし、魔法使いではあっても、自分の不得意な属性だったり、或いは自身の魔法発動より速く魔法の事象を発現させられる事に好印象を持つ者は、高価であっても属性武器というマジックウェポンを所持する事もある。

 だがそれでもやはり、それらの事柄は未熟故に発生する理由からだ。魔法発動の素早さ、不得意な属性ですらも平均的な次元で使用出来る万能さ、様々な戦況下でも幅広い戦術を持つに至った巧みさ、そう言った色んな意味を含めての強さを身に着けた本物の強者からすると、マジックウェポンの効果など邪魔に感じるだけだ。


 まぁ、それでもマジックウェポンを好んで使用する偏屈な変わり者も居るには居る。そう、俺達挑戦者の中にも。

 その有名なヤツの筆頭とも言っても過言ではないのが三馬鹿だ。あいつらはマジックウェポンに込められた力を使わない方が強いだろうに、何故かその力に拘って使用し続けているそうだ。


 因みに、そういうヤツが他にもチラホラ掲示板で見受けられるし、俺の仲間であるタレイアに属性武器を造ってくれと注文が来てたりするのだから、その気持ちが俺には良く分からん。

 何でも、三馬鹿とは違って戦闘では使用せず、部屋に飾る為に欲しいらしいのだが、それでもやはり俺には分からん。コレクターというやつなのだと思うが、高価すぎるので止めといた方が良いとしか俺には思えない。


 だがまぁ、属性武器ではあっても属性を単純に使用しないマジックウェポンなら確かにあっても邪魔にはならないだろう。死神に譲ったデスサイズがそれに類する。

 アイツに渡したのは火属性の鎌で、熱によって陽炎のような現象を生み出し、その結果距離感を誤魔化すといった効果が見込める物になっている。これは接近戦で非常に役立つと思われるので、こういう類いのマジックウェポンなら持っていても邪魔にはならないだろう。


「まぁ、趣味趣向もあるしねぇ」


「はははは、確かにそういうもんでしょうぜ。自分もガキの頃は、マジックウェポンとかに憧れてましたし」


「吾輩もそうであった。特にこの世界に来た当初なんかは、少しでも自身の力を底上げ出来る物が欲しくて欲しくて仕方なかったですからな」


 何となく童心の頃の話がここから盛り上がり、結局は夕飯時にメンバーの皆が集まるまで話は続いた。そして、そこからは夕飯を一緒にしながら、それぞれの子供時代を面白可笑しく話て平穏な時間が静かに過ぎていった。

 因みに、アダマンチウムとアダマンタイトは名称が違うだけであり、その違いは人種間や国家間の歴史文化の違いから発生するものだったりする。なので、俺達挑戦者の中でもアダマンチウムと呼ぶ者も居ればアダマンタイトと呼ぶ者も居る。俺は仲間がアダマンチウムと呼ぶ者達が多かったので、普段はそう呼んでいる。

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