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新人さんを求めて

 掲示板の十階層攻略スレがお祭り騒ぎになっていた。その原因は、誰よりも早く十階層へと到達していた勇者の死である。

 一回目の十階層探索では、無双し続けていた勇者が撤退するしかなかったという結末だったが、次に十階層へと足を踏み入れたなら絶対にクリアするだろうと誰もが思っていた。それ程に勇者は凄まじく、剣道五段という腕前は確かなものだと誰もが認識していたからだった。

 しかし現実は、予想外の力を発揮したミノタウロスの勝利。底力を隠していたミノタウロスが、その一つの要因によって勇者を敗北へと導いたのだ。


 きっと高次元の戦いだったのだろう。現在の俺には到底想像も出来ない攻防が繰り広げられたに違いない。

 俺としては勇者が気落ちしていないだろうかと心配になるが、十階層攻略スレを見る限りではその心配は杞憂なのだろう。何せ、勇者のコメを見るに悲観している素振りは一切なく、レベルをもう少し上げれば勝てると断言しているからだ。


 大した精神力だと思わずにはいられない。俺なら間違いなく凹む筈だ。そしてトラウマになっている事だろう。

 そんな勇者の心の強さを感じたからか、俺は普段より更に気合いを入れて探索する日々を送っていた。

 それによって新加入したナツとアキのレベルも充分に上がっていて、DPも買いたいと思っていたスキルを買えるだけの蓄えが出来ていた。

 それで勿論、俺は欲しかったスキルを買って皆に付与した。



★★★★★★★★


level:28+3


名前:久遠湊


性別:男


種族:ヒューマン


ギフト:テイム、アイテムボックス


スキル:経験値均等化、盾術2+1、剣術2+1


武器:銅の剣


盾:ラウンドシールド


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:無し



level:24+6


名前:ハル


性別:???


種族:スケルトン


スキル:盾術2+1、剣術2+1、剛体力、軽業


武器:銅の剣


盾:ラウンドシールド


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:無し



level:15+15


名前:ナツ


性別:???


種族:スケルトン


スキル:弓術1+1、剛体力New、軽業New


武器:狩人の弓、銅の剣


盾:無し


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:矢筒



level:15+15


名前:アキ


性別:雄


種族:ウィルダーネスパンサー


スキル:剛体力New、軽業New


頭:無し


胴:無し


腕:無し


足:無し


装飾:無し


★★★★★★★★



 可能ならば自分用に剛体力と軽業の二つを買いたかったが、ナツやアキにその二つを買い与えたかったので自分の分は今回諦めた。

 身体能力強化系のスキルは安くないので、そうそうお手軽に買えはしない。それにレベルが一番高いのだから、使い魔にスキルを付与しといた方が無難であると考えたからの妥協だ。

 しかし、妥協とは言ってもパーティーメンバーの強化には違いないので、これまでよりも遥かに強くなりこれまでよりも遥かにDPを稼げるようになるだろう。


 そう確信している俺は、今日から四階層へと進む事を決意して迷宮へと入っていた。

 四階層で出現するモンスターは、狼、猪、芋虫の三種類。これまでの階層とは少し違って、此方の行動を妨害したりするモンスターが居て危険に拍車が掛かった階層となる。

 敵も巧みな連携をしてくる階層なので集中して探索し、今回の迷宮探索での目的を無事に達成したいところだ。


「四階層に入ったら、先ずはこれまでと同じく通常通りに戦う。それで四階層での戦闘に慣れたなら、その時は狼をテイムしたいと思ってるんだ。

 ハルちゃんはどう思う?」


「……………」


「ハルちゃんもそれでいいんだね?」


「……………」


「オーケー。そんじゃ暫くはいつも通りって事で」


「……………」


「ん? 何?」


「……………」


「狼? 狼がどうしたの?」


「……………」


「狼を仲間にするのは反対ってこと? え、違う?」


「……………」


「あぁ、狼を何体テイムするのかって事が聞きたいんだね?」


「……………」


「一体だけだよ。ハルちゃんは反対?」


「……………」


「うん、それじゃ一体でオーケーって事だね?」


「……………」


「よし、考えの擦り合わせも終わったし、四階層の探索を頑張ろう」


「……………」


 ハルちゃんも狼を仲間に入れるのは反対しないそうだ。それどころか、狼をテイムする事自体は大賛成らしい。

 やはりハルちゃんはハルちゃんでパーティーにとって必要な部分を考えており、それで狼のテイムに興味を示したのだろう。


「ミャ」


「……………」


「ミャ〜オ」


 物凄い機嫌良さそうにアキを撫でるハルちゃんを見ていると、ただもふもふ系のモンスターをテイムする事に興味があるだけのように見えてきて少し心配になったが、これはきっと気のせいだろう。

 そう、気のせいだと思いたい。……きっと気のせいな筈だ。

 少し自信が無くなってしまい、助けを求めてナっちゃんに視線を向ければ、彼女は俺の視線に気付いたのか互いの視線が交わった。


「ねぇ、ナっちゃん。ハルちゃんはパーティー構成を考えた末に賛成したんだよね?」


「……………」


 俺の質問に焦った素振りで斜め上へと視線を移し、ナっちゃんは精一杯の知らんぷりをした。姿は骸骨だけど妙に可愛い仕草である。

 しかし俺が負けじと見詰め続けると、ナっちゃんは頬を掻きながら渋々と言った様子でジェスチャーでの返答を始めた。


「……………」


「ぅん? ちょっと意味が分かんないんだけど」


「……………」


「仲間にするのは賛成で、もふもふ系だからってのは無関係ってこと?」


「……………」


「もふもふ系なのも関係あると?」


「……………」


「なるほど。そしてそれはナっちゃんも同意見な訳ね?」


「……………」


「いや、事ここに至って知らんぷりしてもバレバレだからね? アキへの対応を見てたら馬鹿でも気付くっちゅうの」


 拠点に居る時は四六時中アキの身体を撫で回しているのだから、ナっちゃんがもふもふ系を好きなのは既にバレている。ハルちゃんとナっちゃんがアキをずっと撫で回すせいで、アキは俺の下に避難して来るくらいだった。

 まぁそれは兎も角として大きく溜め息を吐きたいところだが、可愛らしいものが大好きなのは女性なのだから仕方ない部分もあると思い直して溜め息を我慢する。他の挑戦者達だって、戦術に関係無く趣味丸出しのパーティー構成にしている者達だって沢山いるのだし。


 でも、少しガッカリしたのは事実だ。ハルちゃんは真面目な性格だと思っていただけに、余計にショックだったりする。

 とは言え、彼女だって本当にパーティー構成を考えてくれてるのは充分に理解してるので、俺が馬鹿な事をし始めたらきっと注意してくれる筈だ。そう思えるくらいには互いの確かな信頼関係を築けていると信じているし確信もしている。


「まぁ人それぞれ趣味嗜好があるしね。それより、これから四階層に入る訳だけど、心の準備は大丈夫かい?」


「……………」


「……………」


「ミャン」


「よし、ならば行こうか。四階層で遭遇するモンスターとの戦闘では、コツを掴むまでは焦らずに行動する事を心掛けるように!

 では、出発!」


 四階層へと続く階段は目の前だ。此処からはこれまでよりも危険なモンスターが居る訳で、皆の力を合わせて進まなければならない。

 そして上手くいけば、今日四階層で新たなモンスターをテイム出来るだろう。更なる戦闘の幅を得る為、これから進む先に存在する凶悪なモンスター達に対抗する為、パーティーの戦術を増やす為、そんな諸々の思惑を含めた新たなメンバーを求めて、俺達は四階層へと足を踏み入れた。

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