数は力
新たな使い魔であるスケルトンには、自分が生まれた季節からナツという名前を付け、こちらも新たな使い魔である豹には、ナツの直後にテイムした事もあってアキと名付けた。
安直かもしれないが、この名付けはそこそこ気に入っていたりする。本人達も気に入っているようだし、名付け方には問題無いだろう。
それより少し気になったのは、新たに加入させたナツの事だ。
何が気になるのかと言えば、ハルちゃんに続いてナツも女性だった事である。ハルちゃんの時と同様に、骨盤の形状が明らかに女性であると物語っていた。
まぁ確率としては二分の一なのだし、女性のスケルトンがたまたま二連続で仲間になっただけの事ではあるが、またしてもステータスの性別は『???』になっているのは少々気になる。
それに対してアキの性別は、ちゃんと雄であると記されているのだから、何故スケルトンだけが性別をボカしてあるのかは気になって仕方がない。
これではやはり、神様が骨についての知識が無かったからの可能性が浮上してしまう。まぁスケルトンという存在を考慮して、その不思議な生態を明らかにすると面白味が無くなってしまうので、あえて『???』とする事で不可思議さを演出しているのかもしれないが。
そう考えると少し神様に親近感が湧いて、ロマンを大事にしたいと思うお人なのかなと考えたりもして少々面白い。妙に人間臭いというか、そんな印象を受けるのだ。
ともあれ、新たに仲間になったナツとアキに、ここは景気よくスキルを買い与えたいところだ。
しかし宜なるかな、現実というのは非情であり、現在の所有DPではナツ用に戦闘スキルを一つ購入してしまうと底をついてしまう。
それ故に考えに考えた結果、取り敢えず弓術のスキルをナツに買い与えて、後はレベル上げをしつつDPを貯めてからという結論に至った。
★★★★★★★★
level:0
名前:ナツ
性別:???
種族:スケルトン
スキル:弓術0New
武器:狩人の弓New、銅の剣New
盾:無し
頭:無し
胴:布の服New
腕:布の服New
足:布の服New
装飾:矢筒New
level:0
名前:アキ
性別:雄
種族:ウィルダーネスパンサー
スキル:無し
頭:無し
胴:無し
腕:無し
足:無し
装飾:無し
★★★★★★★★
弓術スキルを買い与えると同時に一番安い弓や矢筒(矢を三十本入れられる)も買って装備させたのだが、矢筒が装飾扱いなのには少し納得がいかない。何故矢筒が装飾扱いなのか本当に不思議でしかないし、普通装飾と言えばピアスや指輪だったりネックレスとかが思い浮かぶ筈だ。
それなのに何故装飾扱いなのかと考えていたが、結局は神様がそう設定したからと言えばそれまでなので、深く考えても意味がない事に気付いた。
「ま、それよりレベル上げに集中すっかね」
「ミャ〜オ」
「新加入した二人を10レベルくらいにしたら、四階層に進んでも大丈夫かな?」
「ミャ! ミャミャ!」
「少し低いレベルでも四人での探索になるんだし、レベル10もあれば充分だろう。それに、そこまで新入のレベルを上げる頃にはDPも十二分に貯まってるだろうしね」
「ミャ〜ミャミャ」
「…………」
「ミャ〜オ」
そこそこ真面目に今後の事を独り言ちていると、ハルちゃんとナっちゃんの二人がアキの毛並みを堪能しており、撫でられる度に幸せそうに鳴くアキ。
その光景は微笑ましいものの、独りシリアスに考えている自分の横でそんな光景を繰り広げられると、自分が間抜けに思えてくるのでやめてもらいたい。
「オーイ、そろそろ出発するよぉ」
アキの毛並みに夢中な二人に声を掛けると、そこで二人は漸く準備を始め、その二人の代わりに俺のところに来て撫でろと言わんばかりに頭を擦り付けて来るアキ。
「アキは撫でられるのが本当に好きなんだな」
「ミャ」
「これから迷宮に入るけど、心の準備は大丈夫?」
「ミャ」
「今日はナっちゃんとアキが加入してから初めての戦闘になるから、ゆっくり進もうと思うんだけどいい?」
「ミャ」
「オーケー。そんじゃハルちゃんもナっちゃんも準備が出来たみたいだし、頑張って行こうぜ」
「ミャン」
耳の付け根をグリグリ撫でて、それを最後に皆で拠点から出発した。
そして最初の一階層では、これぞ正に瞬殺って感じで、余裕をもってスケルトンを倒すナっちゃんとアキ。その戦闘の様子を見るに、心配する必要は全く無さそうだった。
まぁまだ一階層だからという理由もあるが、これだったら二階層でも次々軽快に勝ち続けるだろう。少なくとも、客観的に見ていてそういう風に見えた。
そしてその予想は外れる事もなく、二階層で苦もなくモンスターを倒す二人を見て確信した。彼女達を新たな仲間として加入させたのは間違いではなかったと。
ただし、確認すべき事がもう一つあり、それは俺とハルちゃんを含めて四人で戦った場合の連携が上手くいくかどうかだ。その時の結果次第では、連携についてパーティーメンバーで話し合う必要があるだろう。
と、そんな風に考えていたのだが、それよりもゾンビと戦う時だけアキの動きが少し悪い事に気付いた。ホントに少しだけなのだが、見ていて何か違和感を感じたのだ。
その違和感の謎を解き明かそうと見詰めていると、スケルトンとの戦いでは要所要所で噛みつきを使用していたアキが、何故か全くゾンビ相手には噛みつき攻撃を使用していないという事を発見した。それで戦闘中に違和感を感じたのだと理解出来た。
そう、理解出来たのはいいのだが、そもそも何故噛みつきを使用しないのかと気になって問い質せば、ゾンビが腐っていて臭いからだとか。
肉食の豹は、そこそこ腐っていたって関係無く肉を食べる筈なのだが、どうやらゾンビは腐り過ぎという判断らしい。まぁ性別も分からないくらいには腐っているし、蛆とかが目に見えて集ってもいるし、確かにアキの言いたい事も分からないではない。
しかし、そんな悠長な事を言っていて肝心な時に役に立たないというのはいただけない。そう思って注意しようと思ったのだが『ならば主人もやって見せてくれ』と言われたら困るし、嫌な事をさせるというのが何より駄目だと思えた。
そんな訳でゾンビ相手には仕方ないとして、今回分かった事は追及しないと決めた。誰だって苦手な事があるのは当然だし、それを無理矢理克服させようとするのも間違っていると思えるし、それだからこそ仲間でフォローし合う事で乗り越えようとなったのだ。
それ故、アキはゾンビと極力戦わなくていいように、皆で連携について話し合いながら三階層へと到達。その後は勿論、三階層の危険さは身に染みて知っているので、俺とハルちゃんも戦闘に加入して実戦を沢山こなし、予想以上に楽々と三階層での戦闘をこなせる事に驚きつつ帰還した。
未だ加入したての新人でレベルも低いのだが、数が増えるだけでこんなにも戦闘が楽になるのかと心底驚かされた。勿論、今まで存在しなかった後方からの援護が今回からあったので、それが一番大きいとは理解しているが、これだったら四階層の探索も充分イケると思えた。
だが、そう思えていても、何事も予想外という事態が起きるのが世の常というものだ。予想外の事態に遭遇すればパニックになり、パニックになれば身体は満足に動かなくなり、その結果は初めて迷宮探索した日と同じ事になるだろう。
そんな結果は勿論嫌なので、驕る事なく新加入したナツとアキを充分にレベルアップさせてから四階層に突入しようと思っている。油断こそ一番の敵なのだから。