戦力強化
三階層の戦闘は本当に気が抜けない。豹の動きは早いし、そこそこ頭もいいので、思いもしない行動を見せる時があって油断など決して出来ない相手なのだ。
俺にハルちゃんという相棒が存在しなかったらと思うと、心底ゾッとする。二階層と三階層では難易度が全く違うとしか言えないのが本音だ。
だが、そんな日々を送って大量のDPを稼いだ結果、俺とハルちゃんのスキルは増えていた。
★★★★★★★★
level:25 +4
名前:久遠湊
性別:男
種族:ヒューマン
ギフト:テイム、アイテムボックス
スキル:経験値均等化、盾術New1+1、剣術New1+1
武器:銅の剣
盾:ラウンドシールドNew
頭:無し
胴:布の服
腕:布の服
足:布の服
装飾:無し
level:19 +9
名前:ハル
性別:???
種族:スケルトン
スキル:盾術1+1、剣術1+1、剛体力New、軽業New
武器:銅の剣
盾:ラウンドシールド
頭:無し
胴:布の服
腕:布の服
足:布の服
装飾:無し
★★★★★★★★
先ず自分に盾術と剣術のスキルを買って付けた様子を説明すると、剣の振り回しの速度が少し速くなった気がするし、盾では弾く時に体勢を崩しにくくなるという効果を実感出来た気がする。
つまり、別に剣術や盾術のスキルを得たからと言っても、剣術や盾術が上手くなる訳ではないようだ。あくまでも技術は自分で磨き、スキルはその技術を底上げする意味合いしかないという事が理解出来たと言えるだろう。
次にハルちゃんの為に買って付与した新たなスキルはと言うと、身体の丈夫さと素早さを上げてくれるスキルのようで、剛体力は頑強さ、軽業は俊敏さ、を上げてくれるというのが戦闘で見ていて分かった。
それによってハルちゃんは著しく強くなったと言っても過言ではなく、スケルトンとは思えぬ打たれ強さと素早さで敵を軽々と倒すようになった。
剛体力と軽業の二つは、DPを貯めたら自分にも買って付ける事を決めたぐらいには素晴らしいスキルだったと思っている。勿論、盾術や剣術も充分に凄いのだが、恐らくスキルレベルが低いのでまだ大きな変化が見られないので実感しづらいのだろうから、この二つはこれからに期待だ。
だがしかし、剛体力と軽業にはスキルレベルが存在しないので、もう成長しないという事を考えると少し不満を感じる。何せ、剣術や盾術とは値段が段違いに異なるからだ。
高額なわりに成長しないというのは如何なものだろうと思うし、出来ればこの二つも成長してくれるのなら成長してほしいと願ってしまう。
まぁそういう仕様になっているのだから仕方ないし、ハルちゃんは強くなれた事で喜んでいるのでここは俺も素直に喜んでおくべきなのだろう。
それは兎も角、レベルも上がっているし三階層での戦闘も慣れ始めているので、そろそろ四階層へと足を踏み入れるのもいいのではと考えている。
掲示板を見ている限り、挑戦者達から勇者と呼ばれていた者がボスとの邂逅を果たしたと聞くし、俺も先に進む時期としては丁度いいと思えたのだ。
しかし、細々とした心配もある。その心配事とは、四階層のモンスターの事だ。
三階層で出現する豹が虎と見紛う程に巨大だった事もあり、四階層で出現する狼や猪、そして芋虫が自分の知っているそれとは大きく異なる姿をしているだろうと予想される。
大きいという事はそれだけで危険だと言えるだろう。今の俺とハルちゃんで上手く対処出来るか、それが不安なのだ。
その不安を簡単に払拭する為には、やはり新たな使い魔をテイムする事が一番の近道だろう。無論、使い魔にした後にその新人のレベルも上げなくてはならないが、それで不安が払拭されるのなら安いものだ。
「ぅ〜ん………そうなると問題は、どんなモンスターを新たにテイムするか、だな」
豹は問題なく強いという事は分かってる。だが、果たして今の俺とハルちゃんのコンビに加入させて上手く機能するのかは分からない。しかし、他にテイム出来るのはゾンビかスケルトンの二種になり、臭くてグロいゾンビは当然排除するとしてハルちゃんと同じスケルトンをテイムするというのは面白味に欠ける。
悩ましい問題だと言えるだろうが、この問題を真剣に考えていないと痛いしっぺ返しを食らう事になるだけに適当に決める訳にはいかない。
新たなスケルトンを仲間にしたとして、剣を装備させて戦うのだとしたら三人とも白兵戦しか出来ないパーティーとなる。まぁ豹を入れたとしてもそれは同じなのだが、しかし豹の場合は驚異的な素早さがあり、全く同じ条件とは言えない。
「しかもなぁ、スケルトンは武器を変更させれば中距離や遠距離でも戦えるし………でも、素早さは圧倒的に豹なんだよ。マジで悩むよなぁ」
「……………」
「え? どうかした?」
「……………」
「あぁ、パーティーメンバーに新たな使い魔を迎えようかと考えてたんだよ。別に腹が痛かった訳じゃないから大丈夫」
パソコンの使い魔スレを睨みながら悩んでいると、ハルちゃんが腹痛ならトイレに行けとジェスチャーで心配してくれた。
それに苦笑しつつ否定して悩んでいた理由を伝えると、何やら焦った様子で身振り手振りに俺へと自分の思いを伝えようと四苦八苦し始めた。
「どうしたの? 早く戦いに行こうって?」
「…………」
「違う? それじゃあ………」
「…………」
「スケルトンと戦いたい? それも違う? スケルトンを仲間にするべき?」
「…………」
「あ〜、ハルちゃんはスケルトンを加入させるべきだと言いたいんだね? 成る程」
「…………」
「ん? どういう意味? 豹も仲間に? スケルトンと豹をいっぺんにってこと?!」
「…………」
俺とは違ってハルちゃんは意外にも大胆な思考をしているようで、スケルトンと豹を新たにテイムするべきだと言っているようだ。どちらか一方をと考えていた俺にとっては青天の霹靂である。
大胆に動く事をしない俺とは正反対の意見だが、ハルちゃんも歴とした俺のパーティーメンバーに違いはないし、その意見を無下に扱うのはよくない。
それ故に暫く思考の海に潜ってひたすら熟考してみたが、考えれば考える程に、特に問題は無いのではと思えてきた。
ハルちゃんだって突然の話題にスケルトンと豹を合わせた合計二体のモンスターをテイムする事を提案するぐらいだから、きっと以前からその考えを持っていたのだろうと思う。自分なりに三階層を探索していて、戦闘で必要な部分を補う為にはと考えてくれていたのだろう。
「分かった。そんじゃスケルトンと豹をテイムしようぜ」
「……………」
大きく頷きを繰り返しながら拍手するハルちゃんに、俺は満面の笑顔を浮かべて同じく頷く。こうやって独りではなく二人で考えながら迷宮を攻略出来るとは思ってもいなかったので、妙に嬉しくてヤル気が出て来た。
「さぁ、先ずは一階層のスケルトンからテイムだ」
最近買ったばかりのラウンドシールドを装備し、俺は準備万端なハルちゃんを伴って拠点を出発した。
そしてそれから直ぐに標的のスケルトンと遭遇して、ハルちゃんとの連携で上手く弱らせた後に難なくテイムスキルを発動させて捕縛に成功する。最早慣れた相手だったし、今回はハルちゃんとの二人での作業だったので非常に容易だった。
その後はそのまま三階層へ進みながら、仲間にするのが白豹か黒豹か普通の柄の豹なのかをハルちゃんと話し合いつつ、結局は流れに任せる事になって三階層に到着して一番最初に遭遇した普通の柄の豹をテイムする事になった。
これで目的のテイムは終了。しかし折角迷宮に入ったのだからと、これで帰るのは勿体ないのでDPを稼ぐ為に暫く三階層での探索を続けた。
それからそれなりの戦利品を得た事で、もう充分だろうという話になって帰還すると、魔方陣の真ん中で豹柄の毛並みを堪能するスケルトンと撫でられて幸せそうにする豹という合計二体の新たな使い魔が出迎えてくれた。