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使い魔、ハル

 テイムに成功して初めての使い魔であるスケルトンを得た俺は、この迷宮の探索を始めた当初と同じく一階層での探索を日課にしていた。

 勿論、その日課には使い魔のスケルトンも同行しており、この日課はスケルトンのレベル上げが目的である。

 ただし、俺は殆ど何もしない。スケルトンが敵と戦闘し、危ない時だけ手を貸すくらいだ。

 それでこの五日間の稼ぎは非常に悪くなっているが、しかし使い魔のスケルトンは順調にレベルを上げており、現在の時点でレベル2に達している。

 しかし、順調とは言っても俺の成長速度とは比べるべくもない。

 何故なら経験値均等化のスキルの影響で、スケルトンが倒して得られた経験値が俺にも分配されているので、スケルトンの成長は単独行動していた俺よりもかなり遅いのだ。得られる経験値が二分の一になっているので当然と言えば当然だが、こればっかりは仕方ないだろう。



★★★★★★★★


level:2 +2


名前:ハル


性別:???


種族:スケルトン


スキル:無し


武器:銅の剣


盾:無し


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:無し


★★★★★★★★



 防具やスキルを買い与える余裕は今の俺には皆無なので、布の服以外は一切買い与えていない。予備に取っておいた銅の剣を与えたくらいだ。

 因みに、スケルトンの名前は俺が死んだ季節の春から取って命名しており、いつもハルちゃんと呼んでいる。


 そんなハルちゃんの不思議なところは、性別が『???』になっている事だ。

 何故か知らないが、ハルちゃんはどう見ても女なのに、ステータスでの性別は『???』になっている。


 人間の骨盤というのは、性別を如実に語っている。男性か女性かは骨盤の形状を見れば直ぐに判別出来るのだ。

 その知識を持っていた俺からすると、ハルちゃんは明らかに女性と分かるのだが、何故かステータスでは『???』になっていて首を傾げざるを得ない。

 実に不思議な話だ。まぁ性別が戦闘に何も関与しない訳なのだが、それでも気になる話ではある。


「神様は骨に関しての知識が無いとか? だからスケルトンの性別が分からなかった感じ?

 いや、神様なんだからそれはないか」


 しょうもない事を考えている間に、ハルちゃんはゾンビを斬り倒していて、それで運良く得られたアイテムの毒消し薬を拾って俺に手渡して来た。

 実に有り難い。気が利くスケルトンだと常々思う今日この頃だ。

 兎も角、俺は毒消し薬を受け取るとアイテムボックスへと収納し、ハルちゃんを伴って次の標的を探し始める。そして見付けたモンスターは、再びゾンビだった。


「ハルちゃん、頑張ってね」


 ハルちゃんは俺の言葉に頷いて前進して行き、再びゾンビとの死闘が始まった。

 レベルはまだ低いものの、ハルちゃんはテイムした直後と比べれば明らかに強くなっている。

 その根拠は、戦闘技術だ。レベルは関係無く、純粋な技術が向上しているのである。

 だからこそ俺は、ハルちゃんに単独での戦闘を経験させている訳だ。


 そもそもレベルを上げる為だけなら、経験値均等化のスキルがあるので俺がバッタバッタとモンスターを倒して経験値を稼ぐ方が効果的なのだ。

 しかしそれでは、使い魔であるハルちゃんの戦闘技術が向上する事は決してない。


 レベルは高いが、戦闘技術は素人。そんな仲間には背中を預けられないと誰もが思うだろう。

 その為にハルちゃんには単独での戦闘をさせていて、それはハルちゃんにも説明している。


 彼女は実に素直で、俺の説明を聞いても一切反論せずに言う事を聞いてくれた。……まぁスケルトンはそもそも話せないし、主人の言う事を十全に聞くのが使い魔にとって当然なのかもしれないが、それでも有り難いと素直に思える。

 俺のような武術素人が考えた強くなる方法でしかないのに、それを聞き入れ素直に実践してくれるのは本当に有り難い。

 と、使い魔のハルちゃんに内心感謝していると、ハルちゃんが危なげなくゾンビを一蹴していた。


「体捌きが上手くなったね。でも、油断は禁物だよ。

 何度も言ってるけど、俺は武術に関しては素人だ。でもそんな素人がこの迷宮でやっていけている理由は、決して油断しないようにしてるからなんだ。

 それだけの理由だけど、俺はそれが一番の理由だと思ってる。だからハルちゃんもそれを心掛けてね」


「……………」


 ハルちゃんは無言で首を大きく上下に振るい、俺の横に移動して来た。

 それを見て俺は再び次のモンスターを探し歩を進め始めると、それと同時にハルちゃんも歩き始める。

 これがこの五日間のルーティーンであり、大切な訓練となっている。


 まぁそんなこんなでその後も暫くは探索を続けた俺達は、最後にハルちゃんがスケルトンを倒したのを機に拠点へと帰還した。

 そして勿論、今日の戦利品をDPに変換させた後はステータスの確認である。



★★★★★★★★


level:20


名前:久遠湊


性別:男


種族:ヒューマン


ギフト:テイム、アイテムボックス


スキル:経験値均等化


武器:銅の剣


盾:無し


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:無し



level:3 +1


名前:ハル


性別:???


種族:スケルトン


スキル:無し


武器:銅の剣


盾:無し


頭:無し


胴:布の服


腕:布の服


足:布の服


装飾:無し


★★★★★★★★


 モニターに映るステータス表記に対して、俺の横に立つハルちゃんは嬉しそうに小さくガッツポーズを取る。その姿は本当に嬉しそうに見えた。

 スケルトンは肉が無いので、笑っているのか泣いているのか、それとも怒っているのか無表情なのか、その判断が非常に難しい。

 それ故に、当初挑戦者達の間では使い魔には心が存在しない説というのが主流だった。それも仕方ないと言えるだろう。


 しかし現在では、使い魔にするモンスターの種類が増えた事で、その使い魔達と生活する中で多くの挑戦者達が使い魔にも心があるのだと認識する事が出来た。

 その結果、挑戦者達である主人と使い魔との関係が大きく変化したと言っても過言ではない。


「ハルちゃんも頑張ってたから、明日からは二階層に行ってみる?」


「……………」


「お、やる気マンマンって感じじゃん。なら明日の探索は二階層に行こうか」


 小さく何度も頷くハルちゃんは、非常にやる気に満ちているようだ。

 だが、このままハルちゃんを二階層へ進ませる訳にはいかない。彼女はスケルトンなのだから、短所である部分をそのままでは二階層の活動がキツい筈だ。


 スケルトンの短所は、軽い身体、動きの鈍さ、身体の脆さ、力の無さ、パッと思い付くだけでこれだけの短所がある。

 その短所を補う為に装備として防具を用意したとしても、ただでさえ動きが鈍い彼女には重い装備が不釣り合いになる訳で、そう考えると盾が好ましいんじゃないかと思う。


 と言うよりも、レベルを上げて行動の鈍さを補填するまでは、盾を装備させるという選択しか存在しないだろう。或いは、弓を買い与えて援護に回すというのもアリだが、現状は肩を並べて戦える仲間が欲しいのでその選択肢は無い。

 それ故、ハルちゃんが横でやる気に満ちているのを横目にしつつ、俺は物品売買で一番軽そうで小ぶりなラウンドシールドを購入した。


「う〜ん、まぁまぁいいんじゃね?」


 ハルちゃんは俺が購入した小さなラウンドシールドを、興味があるのかまじまじと見詰めていた。


「はい、これは今日からハルちゃんのだよ。これで危ない時は敵の攻撃をガードするんだ」


 まぁ単純に防御だけじゃなく攻撃でも使えたりする訳だが、しかしどちらにせよハルちゃんの防御面が向上するのは間違いない。

 ハルちゃんは俺がラウンドシールドを差し出すと、その盾と俺とに視線を交互に向けた後、小さくジャンプを繰り返して喜びを表現し、大事そうにラウンドシールドを胸に抱く。

 スケルトンだけど可愛い仕草だな、と素直に思いつつ、俺は明日からの二階層での戦闘に思いを馳せた。

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