0話 始まり
微かに海が見える、比較的新しい校舎。
男子諸君なら、一度はこんな妄想をしたことがあるだろう。
『不審者が学校に入ってきて、自分が対峙する』そんなシチュエーションを。
その確率は90%を軽く超えているだろう。超えてるよな?俺だけじゃないよな?
みんなしてるって中学校の頃言ってたから! 高校生にもなって、俺だけいたいやつ…ってわけではないだろう…きっとそうだ。そうに違いない。
俺、九重 瑠衣は至って普通の高校生なのだ。
新学期は出会いの季節。早くに父親を亡くした俺は大学なんて行かず卒業後、即働こうと考えていた。母曰く死亡したことになっているがまだわからないんだ、とのこと。子供の頃そう言われたが、実際養育費もよこさないし、遊びに連れて行ってもらった記憶もないので、どこかで浮浪人になっていても何も思わないし、感動の再会!!なんて物語後半のお約束感動シーンは俺にはないわけだ。ちなみに1年の頃の進路希望書は「就職」一択。まぁ、高校卒業後さらに学校に行くなんて憂鬱以外の何者でもないから別にいいんだけど。
「九重…だよな、すまんまだ先生も全員の名前を覚えてるわけではないんだ。悪いんだがこれ、準備室へ運んでくれないか?いやぁ持てるには持てるんだがちょっと面倒だからなぁ。」
そう俺に声をかけてきたのは新人の新担任教師千葉 塁介だ。
筋肉バカだが数学教師らしい…ギャップがすごいな、おい。
というかその筋肉はなんのためにあるんだよと顔を上げた矢先。それ、明らかに1人で持つものじゃないぞと言わんばかりの量の教科書やらなんやらを抱えていた。
(これは断れんわ)
「わかりましたよ。りょうと行きます」
「はぁ!?俺今ラノベがいいところなんだが!?」
急な俺の無茶振りに応えるのは小学校からの同級生 如月 涼 だ。
ちなみに初対面の感想は「名前カッケェ」だったな。
「どうせ暇だろ?てかそれ俺が貸してるやつじゃねぇか。」
「借りてるこれがいいところなんだよ」
「もう貸さんぞ」
「あああああもうわかったよ!ついて行けばいいんだろ!後でもう3巻借りるからな」
着いてくるだけじゃなくて持ってもらうつもりだけど。
「わかりやすく許可とってるけどそれ。俺の本棚からパクったやつだろ」
「帰る前に報告したからセーフだろ」
明らかな事後報告だろ!と心の中での突っ込みを済ませたところでどっさりとした教科書?たちを机に乗せた。
__僕の中での「平和」「普通」がその瞬間崩れ去った。
まずはこの作品を読んでいただき、ありがとうございます。
小説を書くのは初めてで、文才がないのは百も承知ですが趣味程度に投稿していければな、と思います。
なので、投稿間隔は非常に不安定です。