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馬鹿の壁  作者: もゆるり暁
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プロローグ「馬鹿」

西暦203X年、東京・渋谷。かつて年に一度若者が集まって騒いでいただけの渋谷ハロウィンは、今や世界中の馬鹿や犯罪者が集まって暴れ回る暴動と化していた。

 仮装とは名ばかりに凶器で武装した集団、馬鹿どもは一晩中汚い言葉を喚き散らしながら周辺施設への攻撃を続けていた。

事態を重く見た政府はハロウィンの夜、暴徒鎮圧・犯罪者確保という名目で渋谷駅周辺を完全封鎖し、たった一晩で渋谷の周りに高さ約100メートルの城壁「馬鹿の壁」を建設、そのまま一帯を「渋谷特別刑務所」とした。

刑務所内の自治は暴徒達、すなわち「馬鹿」に完全に委ねられ、外部と完全に隔離された。壁の外との唯一の繋がりは週一度スクランブル交差点に投下される食料のみ。


 そして時は過ぎ、壁の建設から100年が経った。

もはや壁の中を知るものは外に存在しない。東京の中央に佇む巨大な刑務所。「渋谷ジャングル」と呼ばれる生い茂った木々が上空からのアクセスを拒む。この時代、その内部と、中に閉じ込められた者の存在は半ば伝説と化していた。


 だが壁の外の人類にとって目下の問題は全く別のところにあった。この100年、日本社会には決定的に活気が足りなかったのだ。科学こそ発展したものの、人と人の繋がりは1世紀前と比べて薄れ、誰もが孤独の中に暮らしていた。

 ある学者は以下のように主張した。「100年前に壁の中に閉じ込めた『馬鹿』、彼らこそ社会に活気を与えていたのだと。憎まれながらも破天荒さと騒がしさで社会に刺激を与えていた必要悪だったと。」

同じことを大勢が思っていたのだろう、「インナーピープル」などと呼ばれていた「馬鹿」への印象は次第に悪いものでは無くなっていった。ある者は100年前のスラングを皮肉を込めて使い、「馬鹿」を「超陽キャ」と呼称して次のように述べた。「渋谷ジャングルの陰に住む者が超陽キャで、お日様の下に住む俺らが超陰キャなんだ。あいつらがいなくなってから、世の中はどんどん辛気臭くなってくる。いっそ壁を壊してしまおう。」

ここまである種楽観的な意見が横行していた一因は、当の「馬鹿」が壁の中で何をしているのか、そもそも生き残っているのかは完全なブラックボックスだったからである。誰もが「馬鹿」を遠い昔の生き物のことのように捉えていた。


 そして「馬鹿」が再評価されて初めていたある日の昼過ぎ、”それ”は現れた。



 「渋谷特別刑務所」の外れにあたる地区に、突然鈍い音が鳴った。この辺りは壁の目の前とはいえ商店などが立ち並ぶ区域だった。道を歩く誰もが音の方を向いた。


 壁だった


 再び鈍い音がした瞬間には地面に近い壁の表面に亀裂が走った。気の弱そうなサラリーマンが声を漏らす。「そんな…あの壁は絶対に壊れないはずなのに…」


 そして三度目の音が鳴った時、壁の外に“それ”はいた


 内部の過酷な環境で鍛え上げられた肉体、弱肉強食の中で洗練された鋭い眼光、壁内側の想像を絶する自然淘汰の中で頂点に達した存在―


その時、イキリ陰キャ共は思い出した

彼らの恐ろしさを

食物連鎖の底辺に居た恐怖を-!

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