6.初依頼を受けた
今日は二話を投稿しようと思います。
「ギルドカードの材料は持ち主のランクが変わるのに伴って自動的に変わります。ランクアップで新しいのをもらうことはありませんので、無くさないように気をつけてくださいね」
すごい。何の原理で卑金属が貴金属に、更にダイヤモンドに転換できるのか。錬金術類かな?元理系女子がぜひ知りたい。
「更に、ギルドカードは偽造や盗用を防止するため、本人が使いたい時のみ機能するように魔法を付与されました。本人が望まない以上、これはただのペンダントと変わりません」
「そうなんですか」
「はい。機能させるにはペンダントトップに魔力を流しながら《シヨウカイシ》という呪文を詠ってください」
……シヨウカイシ?使用開始じゃん。というか日本語じゃん。えっと、とにかくやってみよう。
「《使用開始》」
あわわ、ペンダントトップがチェーンから落ちた。慌ててキャッチする。おお!ペンダントトップがクレジットカードみたいなカードに!……あれ?ブランクが多いな。
「マルくんの基本資料をカードに仕込みますので、少しお貸ししていただきます」
「どうぞ」
「……シャルク冒険者ギルド……Dランク……と、お名前はマルでよろしいですか?」
「はい」
今更マリアだ、とか言ったらどう反応されるかな。ま、言わないが。別に(愛称だから)偽名ではないし、むしろマリアよりこっちの方が違和感がない。
「これでオッケーです。ペンダントトップモードに戻るには《シヨウシュウリョウ》という呪文を詠ってください」
……使用終了だな。
「《使用終了》」
わっ!カードモードがペンダントトップモードに変わって、自動的にチェーンに戻った。……これを発明した人、すごすぎない?
「依頼を受ける時もこなした時もカードモードで受付嬢に渡してください」
「わかりました。早速ですが、依頼を受けてみたいですが……残りの時間が多くないんです。何か短時間でこなせそうな依頼ありますか?」
「そうですね。まずはカウンターに戻りましょう」
ミシェルさんと共に部屋からカウンターに出た。ミシェルさんがカウンターの引き出しから二枚のDランク用の依頼書を取り出した。
左の方はシルバーウルフを三匹討伐、場所はさっきオーガが飛び出した森で、報酬は銀貨四枚。右の方はゴブリンを六匹討伐、場所は行ったことのないとこで、報酬は銀貨五枚。ちなみに、銀貨一枚は1000円ぐらい。
※詳しくは「人物紹介+世界観」をご覧ください
「シルバーウルフの方なら大抵二時間内でこなせると思いますけど……もうちょっと手慣れの方に向いていますわね。こちらの難易度がこれより低くて三時間ぐらいでこなせる依頼もあります。……いかがなさいますか?」
答えは決まってる。……ま、そもそも時間的にもリミットがあって一つのチョイスしかないね。
「シルバーウルフの方でお願いします」
「……わかりましたわ。ではカードを」
ミシェルさんはやはりか、と言わんばかりにため息をついて、受付の手続きをし始めた。
「いい?シルバーウルフはスライムよりずっとずーーーっと強いですのよ?無理しちゃダメですからね?討伐できなくても今回だけは特別に違約金を請求しないであげますから、無理そうだと思ったらすぐ逃げること。いいですね?」
「えっと、はい、善処します」
……やっぱりミシェルさんはまだ私がオーガを倒したことを信じないらしい。
「あ、やはりお待ちください。もうシフトの時間なので、念のためにあたしもついて行きますわ。よろしいですか?」
「構いません」
別にどこに行ってもミシェルさんの自由ですからね。むしろ依頼をこなすとこを見せたら、信じてくれるかもしれない。いつまでもか弱い子扱いされたくないからね。
「では行きましょう」
「はい」
今回は転移魔法で行こうと思う。転移魔法は名前通り、一回行ったことのある場所に転移する魔法です。さっき草原に行ったから、そこへ転移して隣の森に入ればいい。マジ便利。
「ミシェルさんちょっと失礼します」
裏路地に入り、ミシェルさんの腕を触って転移魔法を無詠唱で発動した。
接触があれば他人を連れて転移することができるじゃないかと前から思ってたんだけど、実際にやるのはこれが初めてです。よし、ミシェルさんがちゃんと側にいる。正解だね。
……あれ?よく見ればミシェルさん、固まってるじゃない。なぜだ。
「マ、マルくん……今のって、もしかしてもしかしなくても、転移魔法?」
「?はい」
「……魔法を、使える……つまり、貴族!?」
あ。……忘れてた。この世界で魔法を使えるのは貴族だけだったわ。