5.冒険者になった
時間がありますので、今日も投稿します。よろしくお願いいたします!
草原から難なくギルドに戻りました。だから私は地図音痴だけで、絶対、決して、断じて方向音痴じゃない。
「あら、お帰りなさい。どうでしたか?」
「合格だそうです」
「え、そうなんですか!?」
ミシェルさんはマジ?!と言わんばかりに目を瞠った。認めたくないが、今世の見た目はふわふわすぎて弱そうに見える。むっ。でも舐めたら後悔するぞ!
「で、でも遅かったですね。迷子になったんですか?」
「違います。ちょっと予想外の出来事が…」
「アルトンーー!」
シンシアさんが大声で叫び、私の声を遮った。するとさっきのギルマスさんが奥から出てきた。ギルマスさん…アルトンさんというんだね。前世の父さんの名前は歩智だから、アルトンさんは名前すら父さんと似てるな。
「何だ?……シンシアか。どうした?お前が叫ぶとは珍しい」
「それは……いや、それより!この子のことよ!」
シンシアさんがこっちを指差した。
「……ふむ?お前さん、さっきの坊主じゃねぇか。ミシェル、ちゃんと親に届けろって言っただろ」
「違うわお父さん、この子は迷子じゃなく冒険者志望よ。お母さんに実力テストを見てもらっててついさっき戻ったわ」
「そうだったのか。で?どうだった?」
「……実力テストのことなら難なくこなしたわ」
おお、シンシアさんてミシェルさんのお母さんなのね。アルトンさんの奥方様かぁ。
「なら問題ねぇじゃねぇか。喜べよ、坊主。今日からお前さんは冒険者だ」
「問題はこれからよ!帰る前にオーガに遭遇したのよ」
「はあ!?無事か?!」
「無傷よ。マルが討伐したから」
シンシアさんはオーガの魔石と角を二人に見せた。そしたらシン、と静まり返る室内。
「……は?」
「……はああ!?マ、マルくんが?!あのBランクのオーガを?!」
「ああ、一人でよ」
うーん、そんなに驚くことなのかな。
「正気か?」
「あ、あははは、お母さんの冗談が上手いわね!マルくんも困って…ない?!」
「冗談言っているように見えるかい!ほらマル、あんたも何か言いな」
「えっと……はい、本当ですよ?」
別にオーガのことはどうでもいい。それより早く依頼を受けてみたい。
「あの、別にオーガを倒したのは事実ですがどうでもいいです。それよりミシェルさん、私早く依頼を受けてみたいんですが……」
「……あ、え、ええ……そ、そうですね。取り乱してしまって申し訳ありません。スライムの魔石をこちらのトレーに」
ポケットから青 x1に緑 x3の魔石を取り出してトレーに置く。
「問題ありません。ではこちらの用紙に必要事項を…」
「いや待てミシェル。……お前さん、マルと言ったか。ちょっと別室に来てもらいたい」
「?はい、わかりました」
アルトンさんに従ってギルドの奥にある部屋に入った。これは……いわゆる応接間かな。……あれ?この部屋、どっかで見たような……。
「さて、試験官の報告によるとお前さんがBランク指定の魔物オーガを討伐したらしいが間違いねぇか?」
「間違いありません」
「そうか。んじゃお前さんはちゃんと実力テストを合格したから正式に冒険者になった。おめでとう」
「ありがとうございます」
わざわざ別室まで使ってそれだけしか言わないはずがないな。でも意図が全然わかんない。
「だがお前さんのランクはFから始まるんじゃねぇ」
「と…言いますと?」
「Bランク指定の魔物を倒したため、お前さんを特例でDランクと認定した」
おお、棚から牡丹餅!
「すまんな。本来ならBかCくらいになるのもおかしくねぇが、あんま跳びすぎたら不正を疑われてしまう」
「いえ、嬉しいです」
でも実はどっちでもよかったよ。Fランクからならランクアップの楽しみがある。一方、DランクならFより多い種類の依頼を受けることができる。
「んじゃ、ミシェル。カードを持ってこい」
「はい、こちらにあります」
ミシェルさんが何もないとこから親指ぐらいの大きさの銀色のペンダントトップを取り出して、チェーンに通した。
そういや今の、空間魔法類かな。便利そうだから、帰ったら私もやってみよう。
「ではこちらの銀に魔力を流してください」
言われた通りにした。……そういやどうすればミスリルを手に入れるんだろう。早くミスリルの刀を使ってみたいものだ。
「あ、あら?」
「……え?」
「これはこれは」
魔力を流したら銀の模様が変わった。人差し指ぐらいの長さの小さな刀で、頭に二輪のジャスミンが飾ってる。……あ、あれ?もしかしなくても私がさっき刀のことを考えたせい…?
「剣、か?だが曲がってるな」
「こ、こんな模様初めて見ましたわ……と、とにかくこれがマルくんのギルドカードですわ」
ギルドカードはペンダントらしい。マジか。
でもまぁ、とりあえず念願の冒険者になったし……もっと喜ぶべき、かな……?