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3.実力テストを受けた

 しばらくして、ミシェルさんが一人の四十代の女性と共に戻った。この人が試験官かな。


「この方がマルくんの試験官ですよ」

「あんたがマルかい?あたしシンシア、白金ランカーよ。あんたその剣で戦うのかい?」

「はい、そうなんです。よろしくお願いします」


 白金ランカーというのはつまり、Cランクの冒険者だ。……ところで、ミシェルさんてシンシアさんと瓜二つだね。親子かな。

 あ、因みに。今つけてる武器は昨日、街で拾った鍋の金属の部分で作った刀だ。さすがに木刀を持ってくるのはちょっとあれだからね。

 鍋の少し錆びた部分を前世の化学知識で何とかして綺麗な鉄に戻した。理系女子としての知識が予想外のところで役に立ったな。


「はい、依頼の地図です。マークのつけた場所に行ってください」


 ……ああ、地図か……。これはやばいかも。


「あたしの役目はあんたを監視するだけだから、スライムはあんた一人の力で倒さないといけない。ま、もし不正を発見したか、またあんたに倒せる実力がないと判断したら、即中止するが」

「わかりました」

「んじゃ、問題ないなら今出発すかい?」

「はい」


 ……さて、どうしよっかな。読めない。GPSマップならまたとして、地図なんかを前世から一度も読めたことがない。音声ナビのない紙製地図なんか幾何学模様と平行線で構成した変わった絵にしか見えないのだ。

 仕方ない、魔法でなんとかできないかこっそり試してみよう。脳内でマークのつけた場所の名前を思い浮かべて、GPSでサーチするのをイメージする。


「……《道標》……うわっ!」

「どうかしたんだい?」

「い、いえ、なんでも」


 試しに適当なコールを詠ってみたら、目の前にGPSみたいなウィンドウが突然現れた。びっくりしてつい悲鳴を上げたら、シンシアさんが怪しい目でこっちを見た。

 反応から見ると、シンシアさんにはこのウィンドウを見えないらしいな。ま、私としては好都合だけど。


『左方向です』


 おお、イケボイスの音声ナビだ!脳内で再生するってなんか変な感じがするけど、こんな便利なものをありがたく使わせてもらうよ。

 さて、地図のことも解決したし、早く行くか。


◇◆◇


 半時間後。無事、マークのつけた場所に辿り着いた。《道標》マジ便利!地図音痴の救世主だよ!


「あんた、ここに来たことがあるのかい?何の難もなく辿り着いた冒険者の志望者なんざそうそういないよ」

「い、いえ……ええっと、なんとなく……?」

「そうかい。地図読みは冒険者になるのにいいスキルよ」

「はあ、そう…ですか」


 言えない。ずっと地図を見るふりをして実は魔法で作り出したGPSウィンドウを見続けたの、言えない。

 ……あれ?この草原、どっかで見たことあるような……。


「この草原のすぐ近くにスライムの巣がある。少し経てば目標が出てくるはずよ」

「はい」


 なるほど。この依頼は実力テスト専用だと聞いた時、その地区のスライムの数が激減したりしないかなとちょっと心配した。でも近くに巣があれば、毎回四匹を狩っても大した影響がない。スライムは分裂する生き物だから、すぐ狩られた数を補えるんでしょう。


「あの、シンシアさん。待つだけではなく、この辺りを回って探してみたいです」

「そんなに急ぐのかい?まぁ、勝手にしな」


 急ぐも何も、普通そうすべきじゃない?魔物が自ら来るのを待つってのは時間の無駄じゃん。

 そうね、先ずはもうちょっと奥に行ってみよう…………ん?歩み出して三秒、足の下にぬるぬるでぷにぷにとした何かを踏んだ感触がした。


「……あっ」

「何だい?」


 青スライムだ。……いや、青スライムだった。うっかり踏んだ右足に力を入れた弾みに、スライムが魔石に変わった。……スライムって……こんなに弱かったのか……。気合い入れた私はなんだかバカらしくなってきたぞおい。


「…ええっと、これで一匹、ですかね」

「……は?」


 青い魔石を拾い上げ、苦笑しながらシンシアさんに見せた。


「確かにこれは青スライムの魔石だ。どういうことだい?いつの間にヤッたんだい?」

「えっと、ついさっき踏んじゃってて。スライムって、弱いんですね」

「いやいや、冗談じゃないよ。いくらスライムが弱くても踏まれた程度で死なないわよ、普通」

「そんなこと言われても……。今本当に踏んだだけで魔石に変わりましたし」

「はぁ、まぁいい。次から真っ当なやり方を見せな」


 信じてくれないらしい。解せぬ。

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