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第95話 お化け屋敷③

 時雨と加奈の番が回って来ると、二人はスタッフに案内された扉を開けた。


「さて、じゃあ行きますか」


 軽く屈伸して加奈が先頭に立って歩き出すと、時雨は背後から心配そうな声を出す。


「加奈はお化け屋敷とか平気なの?」


 凛や香は場の雰囲気に呑まれて退場(リタイア)してしまったが、加奈もそうなるのではないかと時雨は思っていた。

 加奈はやれやれと言わんばかりに、溜息をついて反論する。


「こんなの子供騙しよ。私はお化けより人間の内側に潜んでいる悪意の方が怖いわ」


 重みがある言葉だなと時雨は受け止めると、加奈の前世を考えるとそれ以上の事は何も言えなかった。


「怖かったら、私の胸に抱きついてもいいのよ? 例えば『加奈ちゃん、怖いよぉ』って感じで、しおらしい女の子みたいな時雨も悪くはない」

「……それはないな」


 胸に飛び込んでもいいように、大袈裟に手を広げる加奈だが、幾ら想像してもそんな展開はないと時雨は断言する。


「とか何とか言って、本当はエロい展開を少しは期待してんじゃないの? 時雨は元々男だったし、意地を張らなくてもいいよ。あっ、そこの通路にお化けがいる」


 しょうもない会話を続けながら、加奈は前方の通路に潜んでいるお化けを模擬銃で躊躇せずに打ち抜くと見事な腕で撃退に成功する。

 時雨も背後から人の気配を感じると、後ろを振り返らずに模擬銃を構えてお化けを撃退してみせる。


「へぇ、なかなかやるじゃない」

「昔に比べて体力は落ちたけど、相手の力量や気配を察知したりするぐらいは造作もないよ」


 伊達に厳しい訓練を受けた騎士だけあって、体力的な部分は削ぎ落とされて普通の女子高生だが、騎士として養った眼力や勘が衰えていないのは救いだ。


「その割には私や香の尾行に気付かずに、お姫様とデートできると鼻を伸ばしていたけどなぁ」

「それは……人混みも多かったし、気付かなかったよ」


 痛いところを突かれると、時雨は言葉の勢いをなくして精一杯の言い訳をする。

 たしかに浮かれていた部分はあったし、注意力が散漫になっていたのは事実だ。

 前世ではお姫様と言う立場上、凛を狙う不当な輩も数多く存在していたので、護衛に就いていた頃は神経を尖らせて対処に当たったが、今はお互いに一般の女子高生として生活する身なので滅多な事は起きないと踏んでいる。

 そんな事を言っている間に、二人は順調にステージをクリアして行くと、二人の知らない間にその様子をモニター越しで視聴している観客者は盛り上がりを見せていた。

 凛や香も二人の様子をモニターで拝見しながら、SNSでもちょっとした話題に取り上げられていた。


『謎の女子高生二人が例のお化け屋敷を果敢にクリアしている』


 最後のステージも難なく無事にクリアすると、温かい拍手で出迎えたスタッフ達に囲まれて凛と香が駆け寄って祝福の言葉を送った。


「二人共、おめでとう! あんな魑魅魍魎と化した場所から生還できるなんて凄すぎるわ」

「うん、やっぱり私の時雨ちゃんはカッコよくて素敵だな。改めて惚れ直しちゃうよ」


 時雨と加奈はきょとんとしてしまう。


(あっ、これでクリアなのか)


 脱出成功率が五%と謳い文句だっただけに、難易度の高いステージを想像していたので最後までクリアできるとは思ってもいなかった。

 それは加奈も同様のようで、率直な感想を述べる。


「案外、簡単だったわね。ちょっと物足りない感じかな」

「まあ、何はともあれ無事にクリアできてよかったよ」


 時雨は一安心すると、スタッフの一人がクリア達成の記念品としてメダルを授与してくれた。

 終わってみれば、それなりに緊張感と身体を動かす事ができたので、勧めてくれた凛に感謝したいぐらいだ。

誤字・脱字の修正をしました。

ご報告ありがとうございますm(_ _)m

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