第93話 お化け屋敷
凛に合流する連絡を取ると、園内のお化け屋敷前で待ち合わせをする事になった。
先に時雨達が到着すると、数分して凛と加奈が姿を現した。
「お待たせ。もう少し楽しんでいてもよかったのに」
「いえ、私達はもう大丈夫です」
香とは前世の兄弟として有意義な時間を過ごせたし、凛と二人っきりになった加奈の事も気になっていた。
「今度は私のリクエストするアトラクションに参加しようかと思うのだけど、いいかな?」
凛は遠慮がちに言うと、彼女が希望するアトラクションは目の前にあるお化け屋敷だ。
以前、ホラー映画を時雨と観賞した時もそうだったが、意外な趣味だと思っていた。
この年頃の女性は恋愛映画を好む傾向が強いと思うが、凛は「ホラーの方がドキドキして楽しいわよ」と頭の中はホラー一色に染まり、加奈は「養殖の恋愛話は興味なし」とバッサリ斬り捨てて、香は「男女の恋愛より女の子同士の恋愛がいい」と全く興味を示さなかった。
(まあ、私を含めて普通の女子じゃないからなぁ)
訳アリの女子四人は凛の提案したお化け屋敷に賛成すると、心配しながらお化け屋敷の列に並んだ。
凛はテンションを上げると、饒舌になって語り出す。
「このお化け屋敷だけど、時雨と映画館で観た作品とコラボ中なのよ。SNSとかでも評判は上々で『マジ怖い』や『マジ無理』って感想が飛び交っているから、気になっていたのよね」
マジかと時雨は自分のスマホを操作して、コラボ中のお化け屋敷について軽く調べるとその通りだった。
その中でも、お化け屋敷の脱出成功率と言う項目には五%と表示されて生還者は極めて少なかった。
「あの、凛先輩。悪い事は言わないので、参加は見合わせておいた方が……」
「時雨、もしかして怖いの? お姫様はやる気なのに肝心の騎士様が臆病風に吹かれてたら世話ないわよ」
時雨は凛の心労を気遣って止めようとしたが、加奈は大げさに煽ってしまうと、それに火が付いたのは時雨ではなく香だった。
「私の時雨ちゃんに怖いものはないよ! 余裕でクリアするに決まっているんだからね」
「それじゃあ、騎士様のお手並み拝見と行こうかしら」
クリア前提で話が進んで行くと、時雨は困惑しながら仲裁に入る。
「ち……ちょっと二人共」
「ふふっ、いざとなったら守ってね? 私の大事な騎士様」
凛が可笑しくなって笑うと、無事に生還できるだろうかと荷が重くなってしまった。




