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第91話 兄弟の再会②

 凛は時雨と香の間に入って、二人の手を握ると再会を祝福する。


「おめでとう。十数年ぶりに前世の兄弟が揃って再会できるなんて、こんな感動的な事はないわ」

「あ……ありがとうございます」


 時雨は照れながら答えると、今日は何て素敵な日だと神に感謝したいぐらいの勢いだ。

 それは香も同様で、時雨の手を引っ張ってみせた。


「私はしばらくここで彼女と休憩しているから、二人で楽しんできなさいな」


 凛は機転を利かせて目配りすると、加奈も同調して時雨と香を二人っきりにしようとする。


「先輩のご厚意に甘えて、いってらっしゃいな」

「加奈もありがとう。すみません、では後ほど連絡を入れて合流します」


 時雨は会釈すると、香もそれに倣って続ける。

 二人は肩を寄せ合って歩き出すと、「デートはまた今度の機会ね」と凛は残念そうに呟いて二人の背中を見送る。

 香と二人で遊びに行くのは珍しくもなかったが、お互いの正体を知った上で改めると妙な緊張感が湧いて出る。


「あれに乗ろうか」


 時雨は観覧車を指差すと、落ち着いて二人っきりで話せる空間としてうってつけだ。


「うん!」


 元気な声で香は頷くと、前世の頃に街の近くにある野原で遊びに出かけようと誘った時もそうだった。貧しい家庭環境だったので、当時はサッカーに似たような遊びが街で流行っていたが、ボールを買えるお金もなかった。そこで、時雨がボールの代替品になりそうな材料を掻き集めると、シャインのためにボールらしき物をプレゼントした事もあった。

 本物のボールと比べて壊れ易く、その都度修繕を加えてボロボロになるまで使い込んだのは今にして思えばシャインに不憫な思いをさせてしまった。

 二人は観覧車の列に並ぶと、ジェットコースター等の目玉アトラクションに比べれば空いていた。

 係員に連れられて観覧車に乗り込むと、徐々に上昇を始めて二人は傍に寄って座席に着いた。


「お互い、姿形は全く変わっちゃったな」


 時雨は窓ガラスから覗き込んだ二人の姿を見ると、兄弟ではなく姉妹と呼ぶに相応しい姿だった。


「そうだね……僕は死ぬ間際に、今度はお兄ちゃんとまた会いたいと強く願ったんだ。そうしたら、笹山香と言う女の子に転生して、時雨ちゃんと出会えた。幼稚園や小学校に入学する頃までは女の子として受け入れられずに一人称を『僕』って使っていたのを周囲の男の子はからかって、それを助けてくれたのは時雨ちゃんだった」

「騎士として人として困っている人を助けるのは当然の事さ。きっと神様がシャインの願いを聞き入れて私達を引き合わせたのさ」


 香も時雨と同様に女の子として生活を営むのに苦労してきたのだと初めて知った。

 たしかに香は小さい頃に一人称を『僕』と呼んでいたが、女子の中にも『僕』と好んで使ったりする者もいる。香の個性と認識していたが、年を重ねていく内にいつの間にか『僕』から『私』に変化していった。

 香は可笑しそうに笑うと、自分の胸に手を当てて、しみじみと語る。


「お兄ちゃんの志は昔から変わらないね。僕は色々と変わっちゃったよ。胸も立派に大きくなって、声も色っぽくなっちゃった」

「それは私もだよ。胸はシャインの方が大きいけど、体力は昔と比べて全然なくなっちゃった」

「触ってみる? 体育の着替えの時にも言ったけど、お兄ちゃんなら……いいよ。僕は元々、男だから女性に興味があるし、時雨ちゃんは僕の好きな人だから」


 香は時雨の手を引き寄せるようにすると、自分の胸を触らせる。

 心臓の鼓動が直に伝わって来ると、ドキドキが止まらない。

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