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第86話 ゴールデンウィーク一日目②

 園内は予想以上に混雑の様子で、チケットを購入するまで数十分の時間を要した。

 人混みの中をゆっくり進みながら園内に入ると、凛は入口で配布されていたパンフレットを片手に広げてみせた。


「時雨が乗りたいのはこれね。早速、並びに行きましょうか」


 時雨が目当てにしていたジェットコースターを指差すと、再び時雨の腕を掴んで移動を開始する。


「ジェットコースターが苦手でしたら、無理なさらなくてもいいですよ」


 時雨のために無理して付き合っているのなら、凛に申し訳がない。

 高い場所なら、観覧車でも十分に見渡せるのでそちらを勧めたりしたが、凛は微笑を浮かべながら首を横に振った。


「私は平気よ。これでも、グリフォンを飼育している牧場に赴いてグリフォンの背中に乗って大空を舞った事もあったのよ」

「えっ!? そんな話は初耳ですよ」

「だって、時雨や宮中の人間には内緒にしてたからね」


 時雨は思わず驚きの声を上げてしまう。

 昔からだが、お転婆な姫様だなと改めて痛感する。

 今でこそ、女子生徒達が憧れる優等生の凛であるが、前世はじゃじゃ馬のはねっ返りで時雨を連れ回していた一国の姫であった。

 万が一、グリフォンの背中から落下して怪我でもしていたら、護衛に就いていた時雨の責任問題に発展していたかもしれない。


「怪我とかなさらなかったですか?」

「全然平気。むしろ、またグリフォンに乗って、風を感じたいと思ったぐらいよ」


 時雨は凛を心配そうにすると、本人は怖い体験をしたどころか満足そうな様子だ。


「無茶なさらないで下さい。飼育されているグリフォンとはいえ、人間に危害を加えないとは限りませんからね」

「心配してくれてありがとう。さすがに、この世界にグリフォンはいないけど、ジェットコースターやバンジージャンプ等の誰でもお手軽に安全で楽しめる遊戯施設があるのは凄いと感心しちゃうわ」


 グリフォンはこの世界に存在していないのだから、この注意に意味がないのは承知している。

 前世で空を舞うなんて経験はグリフォンの背中に乗るか、ドラゴンに選ばれた竜騎士ぐらいだ。その点、この世界は移動手段として大勢の人間を運べる飛行機や手軽に絶叫を楽しめるジェットコースター等のアトラクションが存在しているのは凛と同様の感想だ。


「それにね。時雨と二人でジェットコースターに乗れるなんて夢みたい。今日は存分に楽しみましょうね」

「ええ、どこまでもお供しますよ」


 時雨は騎士の心構えを忘れず真摯に答えると、二人の間に穏やかな時間が流れた。

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