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第84話 約束

 柚子の部屋を出て、乱れたパジャマを軽く整えると気持ちを落ち着かせて電話に出た。


「もしもし、時雨です」

「ああ、夜分にごめんなさい。今話しても大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ」

「実はゴールデンウィークに遊園地へ行く約束をしたでしょう? 時雨の都合も考えて日にちを決めておこうかと思ってね」


 どうやら、遊園地の約束について日程の確認をするために電話を掛けてくれたようだ。

 時雨から電話するつもりでいたが、なかなか電話する機会がなかったので丁度良かった。

 時雨は自室に戻ると、カレンダーを確認して都合の良さそうな日付を選定する。


「それでしたら、ゴールデンウィーク初日はどうでしょうか?」

「OK、いいわよ。それじゃあ、待ち合わせ場所は遊園地がある最寄りの駅前で午前九時に集合しましょう」

「分かりました」


 すんなり日程が組まれると、時雨はカレンダーにマジックペンで凛との約束を記した。

 以前にも映画館や食事を二人っきりで楽しんだが、自分と同じ境遇の転生者に出会えて嬉しかった反面、デートと称してドキドキさせられてしまった。

 あくまで、今回も先輩後輩の関係で休日を過ごすんだと念入りに言い聞かせると、凛のためにゲームセンターでボカロ人形を取ってあげた時の凛の顔を思い出した。


(凄く喜んでくれてたな)


 優等生の凛が子供のように無邪気な様子で喜んでくれたのはとても印象的だった。

 裕福な家庭の凛が望むものを時雨が用意できるとは思っていなかっただけに、貴重な時間を作る事ができた。


「ふふっ、本当は学校で会って相談すれば済む話だけど、時雨の声がどうしても聞きたくてね。電話しちゃった」

「わ……私の声なんてそんな」


 時雨は突然の告白に慌てふためいてしまう。


「何となくだけど、頬を赤くしている時雨の様子が手に取るように伝わってくるわ」

「もう、からかわないで下さい」

「ふふっ、ごめんなさい。長話も悪いからそろそろ電話を切るね。それじゃあ、お休みなさい」


 電話が切られると、見事に弄ばれたような感じだった。

 柚子の部屋に戻って再びベッドに潜ると、時雨はそのまま目を閉じる。


「お疲れのようね。時雨の可愛らしい姿も拝見できたし、またお姉ちゃんとしようね」


 柚子は時雨の頭を軽く撫でると、そのままベッドに潜って寝息を立てる。

 柚子のおかげで心が少し楽になったような感じがする。

 女の子同士でも全然気にする必要はないんだと――。

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