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第68話 ダークエルフの少女

 ベランダの手すりに腰掛けると、加奈は静かに語り出した。


「ある一人のダークエルフが歩んだ半生について話そうかな」


 ダークエルフの少女は人里から離れた森で暮らしていました。

 少女の両親は流行り病で亡くなり、天涯孤独の身となった少女は森を抜け出して人里を目指した。

 ダークエルフは闇の眷属であるのと同時に持ち前の身体能力を生かして暗殺や諜報活動に長けていたので、他国の人間が秘かにダークエルフを傍に置いていたりした。

 少女も物心が付く頃には戦闘の訓練を積んでいたので、外の世界で活躍しているダークエルフに倣って自分も同じ道を歩もうと考えていた。

 最初は一人でも生きていけると思っていた少女だったけど、現実はそんなに甘くなかった。

 暗殺や諜報活動の経験がない少女を必要とする雇い主は見つかる筈もなく、加えてダークエルフと言う種族は人間や他種族と折り合いも良くないので、当然ながら路銀も持ち合わせていない少女は食事や寝床も満足に確保できなかった。

 しばらくは街の外で食べられそうな雑草を引っこ抜いて食べたり、川の水を汲んで空腹を誤魔化していたが、少女の心の内に絶望が芽生え始めた。

 川の水面に映った痩せ細った身体の少女は惨めな姿に死を連想させた。

 このままでは死んでしまう。

 そんな時に、街道で安全祈願の旅に訪れた二人組の老夫婦が差し掛かると少女にチャンスが舞い降りた。

 あの老夫婦から金品を強奪すれば、今日を生き残れる。

 少女はすぐに実行へ移すと、少女を心配そうに近寄った老夫婦を無我夢中で襲い掛かり、殺害して金品の強奪に成功する。

 それに味を占めた少女は同じ事を繰り返して、数年も経つと少女は盗賊団を結成して頭に収まると、最早、良心の呵責に苛まれる事もなく、冒険者や隊商(キャラバン)を襲撃して生計を立てる程までになっていた。


「空腹の心配もなくなり寝床も確保できたけど、ダークエルフの少女は満たされない日々が続いた。そして、ある事件をきっかけに事態は一変した」


 ある日、盗賊団の噂を嗅ぎ付けた怪しい一団が少女に依頼を申し込んで来た。

 依頼の内容は『御者に扮して、女と護衛の人間を始末してもらいたい』と言う内容だった。

 最初は断ったが、前金として金貨五十枚を提示すると、成功報酬で金貨百枚を約束された。

 大金を前にすると、元々は暗殺や諜報活動をするために外の世界で活躍するつもりだったので、この依頼をこなせば盗賊団を捨てて夢の第一歩に近付けるのではないかと少女は考えた。

 少女は依頼を遂行するために御者に扮して、標的の女と護衛の人間を待ち構えると、依頼者に指定された場所まで運んだ。

 予定通り、女と護衛の人間を始末する事に成功すると、少女に待ち受けていた運命は悲惨な結末だった。

 少女が仕事を完遂させたのを確認すると、依頼者と傍にダークエルフが姿を現して冷たく言い放った。


「ご苦労。お前は一国の姫を襲撃して殺害したならず者として成敗してくれる」


 依頼者が傍にいたダークエルフに顎で指示すると、躊躇なく少女を斬り捨てた。

 少女は意識が遠退きながら、まんまと利用された事に気付いた。

 全身に寒気を感じたが、身体はもう自由に動かす事はできず、次第に寒気も感じなくなって意識を失うと、ダークエルフの少女は生涯の幕を閉じた。

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