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第66話 賑やかな夕食

 夕食は香の母親が高そうな国産牛を用意して、皆ですき焼きをご馳走になった。


「やっぱり、霜降りのお肉は最高だわ」


 加奈は遠慮せずに煮えた肉を自分の皿に盛ると、歓喜に湧いていた。


「ふふっ、お肉は沢山用意してあるから時雨ちゃんも遠慮せずに食べてね」

「はい、ありがとうございます」


 時雨は礼を言うと、肉と野菜をバランス良く取って胃袋に収めていく。

 味は文句なく美味しいのだが、香や加奈は際限なく肉を中心に食べる姿を見ていて、お腹一杯になってくる。

 香は冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぐと、一気に飲み干してみせた。

 その様子を眺めていた加奈は小声で時雨に喋り出す。


「多分、香と私達の胸囲の差はあそこで生まれているんだろうね」

「急に何を言い出すのさ」


 加奈のセクハラまがいな発言は今に始まった事ではないが、時と場所を選んで欲しいと思う。

 そんな時雨の思いを知らずに、加奈は続けて言葉にする。


「時雨って、むっつりスケベみたいな性格だからさ。やっぱり転生しても異性の身体は興味が薄れないものなんだななぁって思った訳よ」

「別に私は……むっつりじゃないよ。騎士として破廉恥な行為をする訳ないよ」

「香と二人っきりの時、お互いメスの顔になっていたけどねぇ」

「……」


 先程の香と二人っきりの話を持ち出されると、何も言い返せなくなってしまう。

 あの時は抵抗する意識もなく、自然と身体が受け入れていた節があった。

 口では妹のような存在だった香を一人の女性として意識した瞬間かもしれない。

 二人に気付いた香は空の二人のコップに牛乳を注ぐと、不信感をあらわにする。


「また二人で、こそこそ話してる」

「大したことじゃないよ。香のおっぱいが大きいのは牛乳をよく飲んでいるからじゃないかなって時雨と話していただけだよ」


 否定できない部分があるだけに時雨は反応に困ると、嘘でもいいからもう少しマシな事を言って欲しいところだ。

 香は加奈に指摘された胸を手で押さえると、顔を赤く染めて恥じらう姿を見せた。


「牛乳もそうだけど、好き嫌いしないで何でも食べたら大きくなるかもよ」

「いや、加奈の質問を真面目に受け答えしなくていいから……」


 精一杯に時雨が突っ込むと、三人の様子を眺めていた香の母親は「若いわねぇ」と微笑ましい気持ちでいる。


(今日は色々ありすぎて疲れたな……)


 時雨は溜息をつくと、夕食を済ませて後片付けの手伝いと順番でお風呂の湯舟に浸かった。

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