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第62話 三人で寝泊まり

 翌日、午前中の授業を終えて昼食を香と加奈で囲むと、香は頬を膨らませてご機嫌斜めであった。


「私が職員室にいる間に紅葉先輩と抱き合ってたって本当なの?」


 原因は昨日の放課後、時雨と紅葉が校門前で抱き合っていた事についてだ。

 人目に付く場所で目撃者も多く、堅物の紅葉を口説き落としたと噂が学校中に広まっていた。


「香や他の生徒達が想像するような事はないよ」


 時雨は首を横に振って否定すると、呆れた様子で弁当のおかずを口にする。

 あの時は紅葉を過去の呪縛に囚われず、時雨なりに精一杯できる事をしたと思っている。

 断じて、噂になるような事実はない。


「香と言う正妻がいながら、クソ真面目な風紀委員の先輩や生徒達の憧れの的である先輩を手玉に取って羨ましいねぇ。私も見習いたいぐらいだ」

「ちょっと……話をややこしくしないでよ」


 加奈が意地悪な笑みを浮かべて感心したようにすると、香を炊き付けるには十分だった。


「決めた。今日は私の家で時雨と寝泊まりする」

 香が突拍子もない事を時雨の意見を無視して決定する。

 明日は学校も休日で寝泊まりする分には問題ないが、香が強引にベッドに押し倒したあの晩を思い出すと一抹の不安があった。


「この際だから、加奈も一緒に泊まりに来なよ」

「えっ? 私は二人の邪魔をしたら悪いから遠慮するよ」


 案の定、加奈は二人を気遣って断ると、香が無言の圧力で泊まりに来るなと目で訴える。

 そもそも、この事態を作り上げた加奈に責任があると思った時雨は迷う事なく誘い込む。

 昨日の音声電話で喋った件も気になっていたので、香の目を盗んでそれとなく訊ねてみたかった。


「たまには女同士三人の腐れ縁でお泊りするのは楽しいよ。学校ではできない意外な話ができたりするかもしれないよ。うん、それがいいよ」


 時雨は半ば強引に話を進めると、断れない雰囲気を作り出した。


「時雨がそうしたいって言うなら……それでもいいよ」

「じゃあ、決まりだね!」


 香も時雨に同調して渋々了承する。


「二人の愛の巣に潜入か。まあ……それも悪くないか」


 この展開は読めなかった加奈だが、口許を緩めると満更でもなさそうだ。

 香はトイレに席を立つと、二人っきりになった途端に加奈は小声で喋り出す。


「女同士三人とか、よくもまあそんな単語を切り出せたねぇ」

「別に間違っていない表現だし、問題はないよ」

「おや、時雨にしては大胆ね。気を付けないと、私も如月先輩みたいに口説き落とされちゃうかなぁ」

「だから、私は誰も口説いていないって……」

「ふふっ、時雨の性格からして分かっているよ」


 本当に理解してくれているのかなと不安に駆られると、予鈴が鳴り響いて午後の授業が開始された。

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