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第59話 前世

「ふう、さっぱりした」


 時雨は紅葉と別れて帰宅すると、夕食を済ませて風呂から上がった時雨はスマホを確認して、紅葉と一緒に写った写真を眺める。

 前世では想いを伝えられなかったが、再会を果たして初恋だった人と肩を並べて写真に収める事ができたのは神様が時雨に後押しをしてくれたのではないか。


(でも、今更告白しても困惑させるだけだよな……)


 百合と言う概念を持ち合わせていなかった紅葉にとって、師弟関係から先輩後輩の枠に収まって時雨を恋愛対象にしていたとは考えられないだろう。

 それに紅葉は前世で恋愛や結婚でひどい過去を経験している。

 しばらくは余計な波風を立てずに現状維持の関係を貫き通した方が、お互いのためになるような気がする。


(また告白する機会を失わなければいいのだが)


 風呂でさっぱりしたのに、頭の中は錯綜としている。

 時雨は首を横に振ると、気分転換のためにパソコンを起動させる。

 動画サイトを開いて、趣味であるボカロの新曲を漁りながらしばらく没頭していると、パソコンの音声電話が鳴り響いた。

 音声電話の相手は登録している加奈からのものであった。

 時雨はマイクをセットして音声電話に出ると、普段はスマホで連絡手段をやり取りしているだけに何事かと思った。


「加奈、音声電話で連絡してくるなんて珍しいね」

「この時間なら時雨はパソコン付けて動画サイトを巡っていると思ったからね」


 中学生からの付き合いもあって、時雨の行動パターンはお見通しのようだ。

 時雨は一旦、動画サイトを閉じると加奈の身体を気遣って要件を聞こうとする。


「声を聞く限りだと体調も良さそうだし、何か用事でも?」

「実はお願いがあって電話したの。時雨の前世、つまり異世界について詳しく聞きたいなぁって思ったの。駄目かな?」

「それは……別に構わないけど」


 加奈は改まって前世の異世界について訊ねる。

 この世界には前世になかった物で色々溢れているので、前世の異世界について加奈に話したところで退屈な話になるのではないだろうか。


「加奈の期待するような展開はないかもしれないよ」

「異世界転生した人物が間近に存在していただけでも凄い事よ。最近流行りの小説やアニメだけの話かと思ったけど、本人から異世界の文化や風習について喋ってもらえる機会なんて二度とないわ」


 そんなものなのかと時雨は一応納得すると、加奈は続けて言葉にする。


「あとは時雨の騎士時代や桐山先輩のお姫様時代についてもそうだし、如月先輩の女騎士時代についても、じっくりと伺いたいわ」

「はいはい。加奈が知りたいのは私や先輩達の事ね」

「わ……私は異世界について純粋に知りたいと思っただけよ。それに時雨から詳しい話を聞ければ、何か異世界転生について新たな発見ができるかもしれないしね」


 本命はこっちかと時雨は呆れながらも承諾する。

 音声電話なので加奈の顔は窺えないが、安易に喜んでいる姿が想像できる。

 異世界についての探求心は本当だろうし、異世界転生について何か見出されれば時雨にとっても悪い話ではない。


「じゃあ、どこから話そうかな」


 時雨は遠い過去を遡って思いを馳せると、時雨と凛が初めて出会った頃について語り始めた。

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