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第56話 ほろ苦いパンケーキ

「連絡をすぐに取り次ぐなら必要かもしれないな。前向きに検討してみるよ」

「分からないところがありましたら、私が相談に乗りますので遠慮なくどうぞ」


 時雨がスマホの機能を紅葉に実践してみせると、紅葉はスマホに興味を示してくれたようだ。

 SNSに投稿とまではいかなくても、電話やメール等の連絡手段を使いこなしてくれれば、気軽に前世についても会話ができる。


「はいはーい。私、分からない事があります」


 香が元気良く手を上げると、これみよがしに時雨と紅葉の間に立つ。


「香、急にどうしたの?」


 時雨が困惑した表情になると、何事かと思ってしまう。

 とりあえず、案内された席に三人は囲むようにして座ると、香の話に耳を傾ける事にする。


「時雨は紅葉先輩と古い知り合いだったの?」

「えっ……」

「だって、スマホの説明をしていた時に『昔から変わらないですね』って時雨言ってたじゃん」


 香はテーブルに肘をつくと、先程の紅葉との会話を振り返って二人の関係性を突いてきた。


(しまった……つい無意識に本音が出てしまった)


 時雨の正体を知っている加奈ならともかく、香は全く知らない事になっている。

 憧れで初恋だった人と並んで喋っている間に、前世に繋がる文脈をうっかり喋ったのはまずかった。


「私は時雨と幼馴染で長い付き合いだけど、紅葉先輩のような上級生と時雨が知り合いだったって言うのは初耳だなぁ」


 香がさらに深く追求してくると、にこやかな笑顔で問い掛ける。

 そういえば、中学生の頃に親切心から加奈から香について注意点を教えてくれた事があった。


『あの子、普段は天然のポンコツだけど、時雨が絡むと妙に勘が冴えているわよ。特に交友関係わね』


 フードコートで昼食を取った時はポンコツな解答を連発したのに、今回は巧みに言い訳を封じ込められて窮地に立たされていく。


「時雨の事は何でもお見通しだからね」


 香は妖艶な笑みで時雨を一瞥すると、注文したパンケーキがテーブルに並べられる。

 食欲をそそる甘い香りのするパンケーキだが、時雨の胸中はほろ苦い思いが広がっていた。

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