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第50話 剣道場②

 時雨は果敢に竹刀を振るうと、紅葉は容易く受け流して様子を窺う。

 予想はしていたが、実力差は思っていた以上に広がっていると認めざるを得ない。

 元々、時雨の身体で前世のような実力を発揮させるのは不可能であるのは自身が一番理解している。

 対して、紅葉は前世の女騎士リュールの時と比べれば、さすがに劣る。

 それでも、並の剣士より格段に強い事には変わらない。


「息が上がって、隙が目立っているわよ」


 様子見から一転して、紅葉が繰り出す技に防戦一方の時雨は捌き切れずに竹刀は宙を舞って手元から離れてしまった。


「参りました……」


 時雨は尻もちをついて素直に負けを認めると、肩が上がらずにいる。


(数回受け切ってこの様か……)


 普段、使用しない筋肉を急激に動かした事により身体は悲鳴を上げている。

 紅葉は手を差し伸べて時雨を立たせると、先程の立ち合いについて振り返る。


「士官学校を卒業しただけあって、基本的な部分は問題ないわ。でも、致命的なのはやはり体力かしらね。私がまた鍛えてあげれば、ロイド君は……」

「それには及びません。この身体で剣を振るうには限界があるのは自分が一番理解しています。お心遣いは感謝しますが、私は剣以外の道を進むつもりです」


 時雨は深くお辞儀をすると、前世で彼女の教えや過ごしてきた時間に感謝しつつ、決別を口にする。

 紅葉なら、剣道以外でも格闘技全般の技能は申し分ない。

 紅葉の言葉に甘えたところで、剣士としての芽がないのだから、足を引っ張るのは目に見えている。

 彼女の時間を割いてしまう事は本意ではない。


「……分かった。教え子の意見は尊重するよ」


 紅葉は時雨に背を向けると、寂しげな表情で竹刀を片付けていった。

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