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第443話 珍客③

 大皿に盛られたそうめんと特製のケーキを並べながら、皆で食卓を囲んでいた。


「具合は平気なの?」


「ええ、もう何ともないわ。この白猫様のおかげで命拾いしたわ」


 時雨は加奈の体調を気遣うと、顔色も元通りになって問題はなさそうだ。

 一時はどうなることかと焦ったが、白猫のミールが加奈に憑いていた怪異を祓ってくれたおかげで助かった。


「ミールさん、加奈を助けてくれてありがとうございました」


「困った時はお互い様ニャ~」


 呑気な声で白猫のミールは答えると、時雨が作った特製ケーキを頬張りながら上機嫌だ。

 加奈も続けてお礼を述べると、白猫のミールを膝元に置いて優しく撫でて見せる。


(一件落着か……)


 白猫とダークエルフの仲睦まじい姿を見ながら、時雨はそうめんを口にする。

 少し離れたところで黒猫が睨んだまま、こちらの様子を窺っている。

 それはまるで愛しの白猫を独占されて怒っているように見えた。


「ご一緒にどうですか?」


 時雨は特製ケーキを切り分けて、黒猫に差し出す。

 一応、この黒猫もミールに並ぶ高位の神様らしいので、粗相がないように心掛ける。

 すると、喉をゴロゴロ鳴らしながら、切り分けた特製ケーキを口にする。

 ついでにケーキに合う紅茶も用意していたので、普通の猫には提供しないものだが、こちらも味見してもらう。

 表情は相変わらずのままだが、黒猫はさらに喉をゴロゴロ言わせて何かを語りかけて来る。


(口に合わなかったのかな?)


 時雨は困惑していると、白猫のミールが黒猫の翻訳を買って出る。


「貴様はクビだ! 出ていけって言ってるニャ~」


 黒猫の様子から、少なくとも褒められているとは思っていなかったが、想像以上の辛辣な感想を述べていた事に時雨は驚きを隠せなかった。


「すみません、ケーキは苦手でしたか」


「ケーキの焼き加減が中途半端ニャ。それと紅茶の淹れ方がなっとらんニャって彼は言ってるニャ~」


 随分と手厳しい評価だなと時雨は反省しつつも、黒猫はケーキと紅茶を平らげる。

 見兼ねた白猫のミールは可愛らしく黒猫を手招きすると、耳元で何か囁き始める。


「白猫様と黒猫様、どっちも可愛いですねぇ」


 加奈は膝元にいる白猫と黒猫を両方撫でながら、幸せそうな笑みを浮かべている。

 しばらくして黒猫は軽快にジャンプして時雨の傍に寄ると、小さな手を差し出して見せた。


「仲直りの握手ニャ~」


 白猫のミールはその意味を伝えると、時雨は素直に握手へ応じる。

 柔らかい肉球と鋭い眼光が時雨に向けられて、まあ悪い気分じゃないなと時雨は満更でもなかった。


「今回は見逃すが、ミール様を不快にさせたりしたらブチ殺すニャ」


 今まで鋭い目付きや喉をゴロゴロ鳴らして訴えかけていた黒猫が、突如として言葉を口にする。

 可愛らしい口調なのだが、明らかに敵対心が見え隠れしている。


「しょ……精進します」


 これには時雨も参ってしまい、顔に似合わず全く可愛気のない黒猫であった。

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