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第437話 行儀の良い女神

 カーテンを閉め切り、照明を落として布団に潜る時雨は薄暗い天井を見上げながら、ぼんやりと考えに耽っていた。


「あの子とその父親はどうなりますかね」


 時雨は車内に放置されていた子供とその父親について白猫のミールに訊ねた。


「子供についてはカフラート君が話したけど、児童養護施設に移されるのが決定されているね。父親は残念だけど助からないだろう」


 遅かれ早かれ、あの親子は引き離される結末だったと白猫のミールは語る。

 子供を車内に置き去りにするような者でも、肉親であるのは変わりない。


「時雨君は優しい人間だから、あんな父親でも子供と引き離すのは納得いかないってところかな」


「……家庭の事情は人それぞれですから、少なくとも私達があの場で助けなければ子供は亡くなっていたと思います。あの子供の今後の人生を考えたら、引き離してよかったのかもしれません」


 時雨が持ち合わせていた正義感で動くと、白猫のミールはそれを手助けする形で子供を救出できた。

 CIAに身柄を押さえられた父親はどうやら、海外の麻薬組織と繋がりのある人物で情報を引き出すためにマークされていたらしい。

 当初は時雨に敵対的な意思を示して接触し、危害を加えようとした経緯を踏まえてミール達が追跡している残党組織の人間である可能性はあったが、白猫のミールは無関係と判断するとキャスティルにアイコンタクトを通じてその旨を伝えた。


「すみません、私の軽率な行動で結果的にキャスティルさんやミールさん達に面倒事を増やしてしまって反省しています」


「気にする事はないさ。それどころか本来なら、時雨君や他の異世界転生者達に謝る立場なんだからね」


 白猫のミールはぬるりと時雨の布団に潜り込むと、顔をすっぽり出して「気にするニャ~」と耳元で囁く。


「どうしても気になるなら、これから私とベッドインするニャ~」


「またそんな事を言って……女神様がそんな言葉を簡単に口にするのははしたないですよ」


「ニャハハ、私のところにいる行儀の良い女神は皆無ニャ」


 たしかに時雨の知る限りでは新米のシェーナやミュースを除いて気性が荒い女神ばかりだ。

 あまり女神の業務内容について詳しくないので一概には言えないが、危険が伴う場所へ赴いたりすればキャスティルのような女神でないと務まらない仕事なのかもしれない。


「そんなの、自慢にもなりませんよ」


 時雨は呆れつつも、白猫のミールはお構いなしに擦り寄って来る。

 もふもふした毛並が顔に当たったりして、白猫のミールは時雨とじゃれ合う。


「あっ……くすぐったいですよ」


「ふふっ、もっと良い気分にしてあげるニャ~」


 調子に乗った白猫のミールはそのまま時雨の胸元に入り込んで、その身をじたばたして見せる。


「ひゃっ!」


 思わず、時雨は叫び声にも似た声を発してしまう。


「もっと悦びの叫びを上げるニャ~」


 女神の言葉とは思えない台詞を吐く白猫のミールに一晩中、振り回されるのだった。

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