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第432話 どうしたものか

 このままでは無銭飲食で本当に警察のお世話になってしまうかもしれない。

 創造神が警察に逮捕される事態を知ったら、ミールを慕う喫茶店の女神等が警察署に殴り込みそうで怖い。


「ミールさん、一旦パフェは中止でお願いします」


 時雨は白猫のミールからタッチパネルを奪うと、現在置かれている状況を説明した。

 すると、ミールは積まれた皿を見ながら皿の色で値段が違うのを理解した。


「ニャニャ! 美味しいから知らずに食べてたニャ~」


 白猫のミールは目を丸くしながら反省のポーズを取る。

 ルールを知らなかったとはいえ、一般庶民の時雨も一度は皿の色を気にせず食べて見たいものだ。

 こうなっては素直にキャスティルへ連絡を取って事情を説明し、彼女に代金を立て替えてもらうしかない。


「むうう、キャスティルが角を出して激おこになるニャ~」


「私も一緒に怒られますから、我慢しましょう」


 白猫のミールは頭に小さな両手を乗せて鬼の角を表現して見せる。

 こうなった一旦は止められなかった時雨にも責任はあるので、甘んじてキャスティルのお怒りを受ける覚悟だ。


「そうだ! 時雨君、キャスティルから貰った一万円札を基礎に私が新しく創造すれば問題解決だニャ」


「それは偽造で犯罪ですよ。問題解決どころか新たな問題が発生するだけです」


 紙幣の偽造はれっきとした犯罪である。

 無銭飲食、通貨偽造のダブルパンチで罪状が増えるばかりだ。

 そんな時雨と白猫のミールがやり取りをしていると、トイレからゴスロリ服の女神が戻って来た。


「おま……私がいない間にそんなに食べたのか! しかもクソ高い皿ばかりじゃねえか」


 女神はやっとテーブルに積まれた皿の存在に気付くと、信じらないと言わんばかりに声を荒げる。

 しかも、積まれた皿を全て時雨が平らげたと誤解をしている始末だ。


「戦闘に特化したキャスティルや武闘派の女神なら大食漢なのも頷けるが、お前はデスクワークが得意なモヤシの女神じゃなかったのかよ」


 たしかにキャスティルやミールは大食漢でその食欲は時雨も目にしている。

 それに対してミュースは時雨と変わらないぐらいだ。

 ここでミールの存在を悟られぬ訳にはいかない時雨は仕方なく、積まれた皿を平らげた張本人を演じる。


「お腹が減っていましたので、つい……」


「ついってレベルの量じゃねえぞ。可愛い顔して胃袋は化け物かよ」


 化け物呼ばわりされる時雨だが、返す言葉が見当たらない。


「キャスティルさんに事情を説明して、この場はどうにか立て替えてもらいます」


「うわ……部下に上司の飲み食いを立て替えさせる気かよ。意外と肝が据わった根性を持ち合わせているじゃねえか」


 女神は時雨をドン引きした目で窺う。

 彼女の視点からすれば、今の時雨はミュースそのもので部下を蔑ろにしているようにしか見えないのだろう。

 勿論、時雨にそんなつもりは一切ないが、言い訳をしたところで話がこじれるだけだろう。

 このままではこの女神の中でミュースの評価はあらぬ誤解を招いてしまう。

 そんな時であった。


「こちらをお受け取り下さい」


 時雨とゴスロリ服の女神の間に割って入るように一人の男性が現れた。

 奇抜で派手な服装に落ち着いた雰囲気の男性は時雨の手に重厚感のある札束を手渡してくれた。


「貴方はミール様のお付きの!」


 ゴスロリ服の女神は周りの目を気にせず、男性に畏まる。

 ミールのお付き人と言う事は事情を把握しているのかもしれない。

 時雨は改めて札束を目にすると、その額はなんと百万円。


「偽札じゃないですよね?」


「馬鹿野郎! そんな訳あるか」


 時雨は突然の大金に偽札を疑ってしまうと、ゴスロリ服の女神は慌てて時雨の口を閉じようとする。

 ミールのお付き人は白猫のミールに一礼すると、そのまま何事もなくその場を去って行った。

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