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第43話 女騎士との再会②

 時雨は懐かしさと同時に驚きを隠せなかった。

 それは紅葉も同様で、先程の態度とは一変して豪快に時雨の背中を叩いて再会を喜んだ。


「王国の騎士になって活躍していると噂に聞いていたけど、そうか……君も死んで転生したのか」


 この懐かしい感じは時雨が初恋だった女騎士リュールで間違いない。

 どうやら、紅葉も時雨や凛と同様に転生を果たしているようだ。


「リュール殿が如月先輩とは思いませんでした。地方領主に嫁いで、今も幸せな暮らしをしているとばかり……」


 容姿は美しく、豪胆な性格の彼女は誰からも慕われる人物だった。

 結婚すると一報を聞いた時は残念であったが、心から幸せを祝福した。

 そんなリュール――如月紅葉はどうして転生をしたのだろうか。


「そうだな……私についてもそうだが、ロイド君の身の上も明日全部聞くよ。今日は凛の件で立ち寄っただけだからね」


 紅葉は時雨に小声で語ると、玄関先の奥にいる柚子が視界に入って竹刀袋を肩掛けにして去って行く。

 時雨は彼女の背中を追いかけるようにして玄関先を飛び出すと、紅葉はタクシーを捕まえて姿が見えなくなってしまった。


(どうして彼女が……)


 突然の訪問者に最初は嫌悪感を抱いたが、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。

 答えは明日に持ち越しになったが、家に戻ると紅葉と一緒にいるところを風呂上がりの柚子が茶化して喰い付いた。


「香ちゃんの他に付き合っている女の子がいるなんて、時雨も隅に置けないわねぇ。時雨はあんな年上のお姉さんが好みか」

「そ……そんなのじゃないよ!」


 前世で惚れた相手なだけに、柚子の言葉に歯切れが悪い。


「ほら、湯冷めして風邪を引いたら大変だよ」


 時雨は話を切り替えて、玄関扉を閉めて柚子を食卓のテーブルに引っ張ると、楽しい夕食を家族で過ごした。

 

 夕食後には母親と皿洗いの手伝いをすると、時雨は風呂の浴槽に浸かりながら紅葉の事を考えていた。

 元々は貴族出身のお嬢様だったが、ドレスに身を包んで社交界に臨むより騎士鎧で剣を振るう方が性に合っていると話してくれた事があった。

 士官学校の教官になる前は最前線で魔物の討伐に赴いて、一時期は彼女のおかげで国内に潜んでいる魔物の数が二割減ったとされている。

 剣術指南では何度も手合わせしたが、士官学校を卒業するまでに何千回と挑んで勝てたのは数えるぐらいしかなかった。


(まさか、こんな形で再会をするとは)


 それは紅葉も同様で、紅葉にとって時雨は師弟の間柄ぐらいしか思っていないだろう。

 もしも、彼女の縁談が決まる前に告白していたら、違った未来があったかもしれない。

 お互い、転生を果たして姿形はすっかり変化してしまったが、時雨の心の中には彼女に対する想いは消えていない。

 鏡面に映っているのは小柄な女子高生の鏑木時雨だ。

 今更、女性になった時雨から告白されたところで困惑させてしまうだけだろう。


(再会できただけで奇跡なんだ。それ以上の望みは罰が当たる)


 時雨は自身に言い聞かせるようにして、風呂から上がると自室で凛とスマホで連絡を取り合って今日一日の出来事を報告する事にした。。

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