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第419話 警察

 身だしなみを整え終えると、時雨はリビングに足を運んで用意された朝食に手を付ける。

 テレビを見ていた白猫のミールは俊敏に跳躍して、時雨の肩へ器用に乗って見せる。


「良い夢は見れたかニャ?」


「ミールさんのおかげ様で快眠できました」


「ニャハハ、それは良かったニャ」


 ミールは満足そうな声を上げると、今度は標的を変えてシェーナの肩に飛び移って見せる。

 手元にあったクッキーをシェーナは白猫のミールが食べやすいサイズに砕くと、肩に乗っている白猫のミールに与えて「美味しいニャ~」とご満悦の様子だ。


「全く……相変わらず緊張感のない野郎だ。シェーナ、話の続きをするぞ」


 キャスティルはミールに呆れつつも先程のようにシェーナと向き合うようにして椅子に腰掛けると、中断していた話の続きを始める。

 どうやら、今後の身の置き方について確認をしているらしい。

 つけっぱなしのテレビからは今日の天気予報について語られると、洗濯日和の雲一つない快晴であると同時に午後からも猛暑が続くらしい。

 こんな日は家でじっとしているのが今までの夏休みの日常であったが、香や加奈といった友人達から誘われてプールやカラオケに行く事はしばしばあった。

 今はミュースと入れ替わっているので、友人達からの誘いはないだろう。

 そんな事を考えている内に朝食を取り終えて、後片付けに入ろうかと思った時にミールからとんでもない一言が耳に入った。


「時雨君、これから私と警察に行こうニャ」


「えっ!?」


 時雨は思わず絶句してしまう。

 ミールのおかげで快眠できた筈だが、もしかしたら寝ぼけて何かの聞き違いかもしれない。

 時雨は首を捻ったり、耳穴に指を突っ込んで調子を取り戻そうとする。


「すみません、もう一度言ってもらえますか?」


 今度は大丈夫。

 改めて、時雨はミールに問い掛ける。


「警察に行くんだニャ~」


 返って来た返答は無常であった。

 警察のお世話になるような事は勿論ない。

 いや、高速道路で煽り運転に遭遇した件や海の家でクレーム客に遭遇した件がつい最近あった事を思い出した。

 しかし、それらの件は女神と協力関係にある米軍が裏で対応してくれた筈だ。

 他に警察のお世話になるような事案があるとしたら、窃盗・詐欺・暴行と続いて、シェーナが淹れてくれたハーブティーのカップに目を移して、まさか違法薬物に手を染めているのかと時雨は悪い方向に頭が回ってしまう。


「一体……何をやらかしたんですか?」


 時雨は覚悟を決めて恐る恐る尋ねる。

 そんな時雨にミールは何を言っているのか、いまいち理解できていない様子だったが、キャスティルが間に入ってある物を提示する。


「運転免許の更新手続きだ。時雨が考えているような前科がつくもんじゃねえよ」


 キャスティルはミュースの顔写真が映っている運転免許を見せると、心の底から安堵した。

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