第414話 運命の赤い糸
「お風呂に戻るニャ~」
本物のキャスティルを前にして、キャスティルの姿をしたミールは何事もなかったかのように振る舞う。
「私の姿と声でクソみたいな喋り方をするな!」
本人が絶対喋らないような台詞を耳にしたキャスティルはミールをとっ捕まえようと動く。
キャスティルの性格なら怒っても仕方がない状況である。
「キャスティルもお風呂で私とピロートークをするニャ?」
「何でお前と好き好んでピロートークなんてすんだよ! てか、ピロートークの意味分かってんのか!」
「ニャハハ、そんなの知ってるニャ。イチャイチャした後に他愛無い会話をするんだニャ~」
一応、意味は理解していたミール。
お風呂でイチャイチャする前提で話を進めるミールに時雨とシェーナは顔を真っ赤にしてしまう。
「時雨君とシェーナ君は元々前世が思春期の青年だったからね。この件の責任者である私が親身になって務めるのは至極当然なんだニャ~」
「嘘つけ! どうせ、私の姿でその二人を困惑させて悪戯するのが目的だろうが!」
ミールと長い付き合いのキャスティルは彼女の思考回路を熟知している。
キャスティルは時雨とシェーナのために尤もらしい理由を付けて悪戯するのを見抜くと、ミールは否定する事もなく感心に浸る。
「ふふっ、私の心を正確に読めるなんて凄いニャ。もしかして、私達は運命の赤い糸で結ばれていたりして」
「気色悪い事を言うな! それと私の運命の赤い糸で結ばれているのはカフテラだ」
ミールとの赤い糸を全否定するキャスティルはきちんと訂正してツッコミを入れる。
たしかキャスティルと初めて出会った時、破壊神カフテラと一緒にデートをしていた現場に居合わせた。
あの時はミュースの店にクレームを入れていたキャスティルを凛と共に止めに入ろうとして一悶着の騒動に発展したが、ミールによって助けられた。
「じゃあ、カフテラに変身するニャ~」
ミールは軽い返事をしながら、時雨とシェーナを担ぎながら変身魔法を瞬時に発現する。
今度は全裸のキャスティルからカフテラへ変身を遂げて見せた。
「これでキャスティルと運命の赤い糸で結ばれるニャ~」
「なっ! さっさと元の姿に戻りやがれ!」
愛しい恋人に変身されて、キャスティルの怒りはさらに膨れ上がる。
カフテラの姿と声で気の抜けた語尾の喋り方をするのだから、当然の結果である。
しかし、変身して意図的に運命の赤い糸を作り出す発想はミールだからできる芸当だ。
「ニャハハ、このまま皆でお風呂に入るニャ~」
ミールはそのまま二人を担いだまま脱衣場まで走り抜けると、それを追いかけるようにしてキャスティルが後に続いた。




