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第411話 ミュースで入浴②

 (よし……やるか!)


 修道服を脱ぐ覚悟が決まった時雨は無言を貫いて普段通りに振る舞っている。

 猛暑だった気温のおかげで、時雨が想像していた以上に汗を掻いていたらしく、修道服は少々汗臭い。

 とりあえず修道服を洗濯機に放り込んで、第一関門は突破。

 そして第二関門である下着姿のミュースが洗面台の鏡に映っている。


(お……大きいな)


 海の家でアルバイトをしていた時、水着姿になったミュースをこの目で見ていたが、スタイルは抜群に良かった。

 まさか、ミュースの身体を実体験する事になるとは誰が想像できただろうか。

 鏑木時雨に異世界転生後、中学生の頃から女性らしい成長を体験するのは新鮮であるのと同時に罪悪感のようなものが常にあった。

 時雨の周りにいる女性陣達と比べて、時雨自身胸の大きさは微々たるものであるが、それでも胸の膨らみは肌で感じ取っていた。


「ただいまニャ~」


 気の抜けた声が時雨の耳に入る。

 床に視線を移すと白い毛玉の塊が目に移り、それは薄汚れた白猫のミールだった。


「毛並が汚れていますが、怪我とかしてないですか?」


「全然平気ニャ。少し暴れたから早くお風呂に入ってさっぱりしたいニャ」


 たしかに怪我をしている様子はなく、いつも通りだ。

 ミュースの住んでいたボロアパートの瘴気はミールが全部祓ってしまったらしく、安全は確保されたらしい。

 ここで問題なのは瘴気を完全に祓ってしまった影響で、格安の事故物件ではなくなるだろう。


「任務に見合う経費は申請すれば通す筈だけど、まさかあんなアパートに住んでいたとは予想外だったニャ。誤解してほしくないのは私が意地悪して住まわせたりとかしてないニャ」


 これに関しては本人から格安の家賃で修行の一環になると話していたので、ミールが関与しているとは思っていない。


「時雨君がこれからお風呂に入るところなら、丁度よかったニャ。一緒に入ろうニャ」


「ええ、いいですよ。毛並の汚れは私がきちんと落としますよ」


「よろしくニャ~」


 白猫のミールは時雨の肩に乗り、上機嫌になる。

 一人で入るより、白猫のミールと相手をしながらお風呂に入れば気が紛れてよかったのかもしれない。

 時雨は第二関門の下着を脱ぎ始めようとすると、ミールは突然言葉にする。


「あっ……」


「どうかしましたか?」


 時雨はミールに尋ねる。

 何か重大な事でも思い出したのかと不安が過ぎる。


「そっか……そうだよね。空気が読めなくてごめんニャ」


 何の事だか分からないが、ミールは小さく頭を下げて時雨に謝る。


(空気が読めなくて?)


 思い当たるような事は何もなく、ミールは続けて言葉にする。


「時雨君は前世が血気盛んな年頃の男の子。一人でお風呂を堪能したかったに違いないニャ」


 白猫のミールは時雨の肩から離れると、お尻を向けてそのまま脱衣場を後にしようとする。


「なっ……そんな気遣いは無用です!」


 何でこんな時だけ妙な気配りをするんだと時雨は憤慨しながら白猫のミールを呼び戻した。

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