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第407話 本題③

「まあ、地道に回収するしかない。このまま放置すれば、地上のパワーバランスが崩れるのは必至。核兵器まで無効化できる技術まで発展すれば、財団の代表者だったカーンの描く未来が待ち受けているからな」


「彼は本気で創造神ミール様に勝つつもりでいたのでしょうか?」


「……ふん。あの女を倒すなんて発想は頭がイカれているか、馬鹿なだけだ。とても正気とは思えんよ」


 理恵の問いにキャスティルはバカバカしいと言わんばかりに否定的だ。


「現地での主な回収作業は我々に任せて、アメリカ側には情報提供と事後処理をやってもらえれば文句はない。元々、回収はこちらで速やかに実行する手筈だったからな」


 話の決着が着いたとキャスティルが切り上げようとする。

 それが最善な方法だと自負する彼女に異を唱える者が現れる。


「それはできない相談だね」


 店全体から女性の声がどこからともなく聞こえて来た。

 創造神ミールである。


「その理由は?」


 別段、驚く様子もなくキャスティルがミールに尋ねる。

 時雨の肩には白猫のミールが行儀良く乗っていて、声を発している様子はない。

 創造神である彼女なら、これぐらいの芸当は朝飯前なのかもしれない。


「理由は簡単だよ。我々の中に裏切者が存在している。それを放置して回収を急いだところで最悪な結果を招くかもしれない」


「裏切者ねぇ……私がその裏切者だったら?」


「それはないよ。キャスティルが裏切者だったら、時雨君を含めた異世界転生の人間達はとっくに葬られていた可能性が高い」


 ミールが指摘すると、たしかにキャスティルが裏で手を引いていたら、ここに立っている事はなかっただろう。

 それにキャスティルには裏切るような動機もないし、裏切者には属さないとミールは判断している。


「裏切者の手掛かりを追うためにも、アメリカ側でカーライン博士や理恵博士と同等の地位を保持していた第二セクターの博士が鍵を握っていそうなんだけどね」


「残念ですが、グラハル博士の行方は現在捜索中です。彼は元々、各国と太いパイプの繋がりがあった人物。ロシアや中国に亡命していたら、身柄を確保するのはとても難しいですね」


 ミールが鍵を握っている人物について触れると、理恵がその経緯について語ってくれた。

 どちらにしても、ミール達がやり遂げようとしている事は前途多難だ。


「お前の事だ。裏切者の見当はついているんじゃないのか?」


「いや、全然分からないね。地道に回収作業を進めながら、情報収集を継続するしかない」


 キャスティルの言う通り創造神である彼女なら、裏切者が誰なのか大体の目星がついていると思っていた。


「まあ、そういう事だから今後も我々とアメリカで協力しながら解決していく方針だ。これからもよろしく頼むよ」


 ミールは回収作業に必要な人員を割いて、今後も積極的に解決させていくと約束してくれた。


「勝手に人員を割けば、お前に反感を買っている一部の連中を付け上がらせるぞ」


「文句があれば、いつでも受け付けるニャ~」


「……はぁ」


 語尾に白猫で口癖だった『ニャ~』が出てしまい、時雨は慌てて肩に乗っているミールへ視線を移す。

 キャスティルは呆れた様子で時雨の肩に乗っていた白猫のミールを片手で雑に持ち上げると、そのまま厨房へ姿を消した。


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