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第406話 本題②

「この数か月間、日本の領海に侵入した漁船は座礁し、船員は例外なく行方不明となっています。海上保安庁は何らかの事故に遭遇し、海に投げ出されたか可能性も考慮して行方不明者の捜索を継続中です」


 店主の女神はスクリーンを操作して何枚かの映像が映し出された。


「残念だが、行方不明者は存在自体を消されているだろうな。おー、怖い怖い」


 テンガロンハットの男は茶化すような素振りで話の腰を折る。

 それが(かん)に障ったのか、店主の女神は細目でテンガロンハットの男を無言で睨んでいる。

 キャスティルは煙草を咥えながら、進捗状況を尋ねる。


「財団の代表者であったカーン・リベスターがばら撒いた存在自体を消去する兵器。回収作業は芳しくないと聞いているが?」


「実質、回収できたのは二件のみ。領海内の事件は確実に日本政府の連中が絡んでいるだろうな。仮に日本でばら撒かれた分を全て回収できたとしても、既に亜種が世界中に拡散されてしまった。全てを回収するのは不可能に近い」


「ばら撒いた張本人はアメリカの元CIAに属していた人間だろ」


「お前等の理屈だと、ばら撒いたアメリカ側にケツ吹きをさせたいらしいが、大元である技術はお前等から継承されて作られた代物。責任の一端はそちら側にもあると思うがね」


 テンガロンハットの男がつまらなそうに意見を述べると、キャスティルに代わって店主の女神が我慢できずに怒りを露にする。


「貴様! 運命の女神キャスティル様に向かってその口の利き方は何だ!」


「ふん、運命だか幸運の女神だか知らないが、神を自称するならこの件を簡単に解決して欲しいもんだ」


 その言葉が引き金となり、細目が完全に見開いた店主の女神はテンガロンハットの男の胸倉を掴もうとする。

 一触即発になりかけたところに、キャスティルが店主の女神を引き離して彼女の顔をはたいて見せた。


「キャスティル様!」


「私に恥をかかせるな」


 小さく呟いたキャスティルに店主の女神は思いを汲んで黙り込んでしまった。

 テンガロンハットの男の隣に座っている存在感の薄い女性が「ケンカ腰になっちゃ駄目だよ」と諭すように男を注意する。


「たしかに手段を問わず我々の戦力を本格的に投入すれば、簡単にこの件は片付くだろう」


「じゃあ、片付けてもら……」


「その場合、疑わしい人間は徹底的に排除していくことになる。それがどんな結果を招くのか実験してみようか?」


 キャスティルが威圧的に目を光らせる。

 その凄味に圧されて、テンガロンハットの男は瞬時に言葉を失ってしまう。


「それはご勘弁願いたいですね。一歩間違えれば、人類が滅亡する事案ですよ」


「アホらしい。そんな訳が……」


「ありえますよ。彼等が本気を出せば人工衛星を無力化させるのは簡単でしょうし、最新鋭の兵器は一瞬にして使い物にならなくなるでしょう。最終的に核兵器の使用だけができる状態へ戦局を誘導すれば、疑わしい人間は人類を犠牲にして確実に地上から消せますから、迅速且つ効率的な方法です」


 理恵が真面目に声を張り上げて見解を答える。

 時雨もテンガロンハットの男と同様にそんな事はないだろうと思っていたが、肩に乗っていた白猫のミールは「ありえない話ではないニャ」と耳元で囁く。


「そんな物騒な未来を我々は望んでいません。そのためにもカーライン博士が交渉の窓口となって創造神ミール様と結んだ協定があるのですからね」


「その協定の存在については最近知ったのだがな。いつも勝手な事をする女だ」


 キャスティルは煙草を吸い殻に捨てて、時雨を睨むように視線を送る。

 いや、正確にはその肩に乗っている白猫のミールへ向けられているような感じだ。

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