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第402話 集会

 昼食の支度をシェーナに任せた時雨はリビングのソファーにくつろいで暇を持て余している。

 時雨の膝の上にちょこんと座っている白猫のミールは欠伸をしながら、こちらも同様に暇を持て余している。

 鞄に入れていた本でも読もうかと思ったが、ミュースの姿をしている時雨が取りに行く事もできない。


(テレビでも点けるか……)


 丁度ソファーの横にテレビのリモコンがあったので、とりあえず適当なチャンネルに合わせる。


「何か見たい番組はありますか?」


「この前の女神が出るアニメが見たいニャ」


 時雨はミールに尋ねると、ご所望は旅館で視聴したアニメのようだ。

 本家の女神様がアニメの女神様を見たいと言うのは面白い構図である。


「本当に気に入ってたんですね」


「ニャハハ、結構面白い趣向でいいと思うニャ」


「うーん、残念ですがこの時間帯にそのアニメは放送していませんね。今日の夜に放送しますので、その時に視聴しますか」


 ミールが厳格な女神じゃなくて本当に助かった。

 その分、部下であるキャスティルのような女神がしっかりしているので、女神の世界はこれで上手く回っているのだろう。


「それは楽しみだニャ。この地球、とくに日本は異世界転生を題材にした作品が多いようなので新鮮で尚且つ刺激的な触れ合いができて素晴らしいニャ」


 テンションが爆上がりなミールは尻尾をバタバタさせて喜んでいる。

 あのアニメはたしか原作が漫画だった筈なので、お土産に漫画を持たせてもいいかもしれないなと時雨はミールの背中を撫でながら微笑ましい笑みを浮かべる。

 点けていたテレビの天気予報が終わると、一斉にニュース速報が流れた。


『種子島沖で測量艦が領海侵入後、消息が途絶える』


 それまで、のほほんとしていたミールは一転して険しい表情でテレビをじっと眺めている。


「ふぅ、冷蔵庫にある飲み物を適当に頂きますね」


 リビングの扉が開くと、理恵は喉が渇いた様子で入って来た。

 てっきり、ミュースが台所で調理しているとばかり思っていた理恵はリビングのソファーでくつろいでいるミュースの姿をした時雨が目に入って驚いている。


「あれ? じゃあ、台所にいるのは……」


 理恵は台所で調理作業しているシェーナを見つけると、「例の元男子高校生か」とシェーナの事情を察しているようだ。


「どうも……」


「君の事はカーライン博士から色々耳にしているよ。いやぁ、実際こうして目にするとモデル顔負けの美人さんだね」


 理恵は冷蔵庫から牛乳を取り出して、握手を交わしながらシェーナをじっくり観察する。

 美人と褒められても、元々男子高校生だったシェーナにとって正直あまり嬉しくはない感じだ。


「ははっ、いきなり面と向かってそんな事言われたら困惑しちゃうか。調理の邪魔をしてすまなかったね」


 理恵は申し訳なさそうに頭を掻きわけて一言謝ると、シェーナの心情を察してくれた。

 そのまま牛乳をコップに注いで、理恵はリビングのソファーに寄って時雨の隣に座った。


「この測量艦ですが、また財団絡みですね。乗船者の衣服が船内に何着も散乱していたようですからね」


 普段の理恵が喋っている声のトーンとは違って、真剣な表情を浮かべている。

 事情を詳しく知らない時雨には何の事だか分からないが、とりあえず適当に口裏を合わせてやり過ごそうとする。


「ええ……そのようですね」


「その件で、そちらと情報共有を兼ねて近々集会を開きたいと合衆国側が希望しています。これ以上、被害を拡大させないためにもご検討をお願いします」


 理恵はミュースの姿をした時雨に頭を下げると、時雨の知らない理恵の一面を覗いてしまった。

 合衆国の名前が挙がると、この場ですぐ二つ返事をする事は到底できない。

 そんな折、白猫のミールが時雨の耳元で囁いて見せた。


「了承していいニャ。今晩、集会を開こうニャ」


「わ……分かりました。そのように伝えます」


 ミールから許可が下りると、集会は急遽開催されることになった。

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