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第389話 お姉ちゃんは特別

 加奈と優奈はキャスティルによって強制的に元の姿へ戻される。


「まったく……この変態エルフ姉妹と言い、見過ごすお前もお前だ!」


 キャスティルの怒りの矛先はミュースへ飛び火してしまう。

 大昔、聖女として地上で活動していた時に知り合ったエルフからエルフ族の風習について知識は得ていたが、先程のアレが求愛の儀式とは知らなかった。

 まさか、朝からそんな儀式を繰り広げていたとは到底考えられなかったミュースは深く反省して、キャスティルがしばらく小言を並べると加奈と優奈の腹の虫が鳴って「さっさと飯を食って来い」と言われて解放された。

 結局、加奈の長耳が腫れた原因は優奈にあり、散歩中近くの公園を通りかかり休憩がてらに木陰で涼んでいたところを優奈が不意を突いて加奈に求愛を迫ったのが始まりだったらしい。

 優奈の求愛は今に始まった事ではなく、違った形で以前から続いていた。

 互いに前世が仇敵関係だった事が判明してからはさらにその頻度は高くなっていった。


「優奈ちゃんはお姉ちゃんが好きなんだねぇ」


「当たり前です。私にとってお姉ちゃんは……特別なんですから」


 理恵が優奈の頭を撫でながら会話をすると、優奈はそれを払い除けて自分の食器を片付け始める。

 加奈もそれに続いて食器を片付け始めると、二人は台所に並んで立っている。


「ごめんね……お姉ちゃん」


「優奈に悪気がないのはお姉ちゃんが一番分かってるよ」


 今度は加奈が優奈の頭を優しく撫でると、「うん!」と素直に受け止める。

 その光景は仲睦まじい姿の姉妹なのだが、加奈に対する優奈の愛情は少々重いような気がする。

 強いて挙げるとしたら、ヤンデレと言う言葉が一番近いかもしれない。

 全員、朝食が済んだところで早速昨日の宿題の続きを始める事になった。

 距離を取って席を設けると、前列に加奈、香、優奈で後列に時雨、理恵の順で決定される。

 時雨の前には加奈の小さな背中が目に入ると、キャスティルが目を光らせて様子を窺っている。


「分からない問題があれば黙って手を上げろよ」


 教師らしい振る舞いを見せるキャスティルに理恵はいち早く反応して手を上げる。


「先生、教えて欲しい問題があります!」


「お前は教える側の……いや、何でもない。何が分からないんだ?」


 教える側の人間だろと言いたいところだったが、敢えてキャスティルは理恵の正体に触れないで面倒臭そうな表情で対応に当たる。

 小声で何か喋っているようで全容は把握できなかったが、「それは自分で答えを見つけろ」とけんもほろろに断られてしまった。

 おそらく、教科書に載っている問題とかではなく駄目元で異世界転生した私達や女神について尋ねたのだろう。


「やっぱり駄目かぁ」


 こうなる事は結果が見えていたと言わんばかりに、理恵は諦めてそれ以降挙手する事はなかった。

 しばらく沈黙が続いて一時間が経過したぐらいになると、正面にいる加奈に変化が見られた。

 加奈はノートの切れ端を破って小さく丸めた物を背後にいる時雨に向かって投げ込んだのだ。

 悪戯の類かなと思って最初は無視していたが、続けて投げ込まれて来る。


(何だろう?)


 時雨は渋々中身を確認して見ると、ノートの切れ端には簡潔な言葉が書かれている。


『助けて……』


 本当に具合でも悪いのかと心配になった時雨は加奈に声を掛けようとすると、キャスティルの目に止まってしまう。


「何している?」


「加奈の体調が悪いようで……」


 ノートの切れ端については伏せて加奈の異変を伝える。

 すると、加奈は少々フラつきながらもゆっくり立ち上がった。


「お花を摘みに行ってもいいですか?」


「トイレを我慢してたのか。スマホは置いて行けよ」


 加奈はキャスティルの言葉に従い、スマホを置いて部屋を退出する。

 大事に至るような事ではなさそうだったので、時雨は一安心する。

 数分後、加奈が戻って来ると再び自分の席へ着いた。

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