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第386話 朝の時間

 翌日、時雨はいつも通りの起床時間に目が覚める。

 隣で寝ていた筈の理恵の布団は既に空となっており、優奈も同様であった。

 私服に着替えて朝食を作るために台所へ向かおうとすると、包丁を使ってまな板で小刻みなリズムを鳴らす音が聞こえて来る。


(誰だろう?)


 香や加奈でないのは瞬時に分かったが、思いつく限りでは他に料理ができそうなのは理恵ぐらいだ。ここの主人であるキャスティルは料理のスキルについては、お世辞にも任せておけないレベルなので除外してもいいだろう。

 ゆっくり台所を覗き込むと、そこにいたのはエプロン姿のミュースだった。


「あら、時雨さん。おはようございます」


 包丁を置いて、まな板にある千切りされたネギを寸胴鍋に入れながら爽やかな朝の挨拶を交わす。


「お……おはようございます。何時からこちらへ?」


「先程着いたばかりですよ。時雨さん達に朝食を用意しようと適当に食材を持ち込んで来ました」


 どうやら、時雨達がキャスティルのところへ寝泊まりするのを聞き付けて、わざわざ早朝から駆け付けてくれたらしい。


「私も何か手伝いますよ」


「大丈夫ですよ。加奈さんと優奈さんは二人で近くを散歩すると出掛けて、理恵さんはキャスティルと書斎でくつろいでいますので、時雨さんも適当にくつろいでいて下さい」


 ミュースは時雨を気遣ってやんわり断りを入れると、包丁を手にして調理を再開する。

 その姿はまるで母性溢れる母親のような温かさで溢れているように見えた。

 お言葉に甘えて、時雨はその場を後にして部屋に戻ろうとすると、まだ眠たそうな顔をした香が部屋から飛び出て来た。


「あっ、時雨ちゃん……おはよう」


 香は目覚めの挨拶代わりに時雨に抱き付いて見せる。


「夜はちゃんと寝られたの?」


「加奈が僕の布団に潜り込んで悪戯するものだから、寝るのは遅くなっちゃった」


「それは大変だったね。とりあえず髪の毛が少しボサボサだから、顔を洗った後に整えようか」


「うん!」


 あの晩、時雨は理恵に香は加奈に悪戯されていた訳だ。


(やれやれ……)


 時雨はそのまま香を洗面所まで連れて行き、時雨も身だしなみを整える手伝いをしながら朝の時間がゆっくり流れた。

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