第383話 探求心
部屋の照明を消して、三人はそれぞれ布団に潜って床に就く。
理恵が要点をまとめて分からない問題を全部解いてみせると、優奈は素直に頷きながら聞き入れてくれた。
「じゃあ、残りは明日にしよっか」
「……分かりました」
おかげで優奈も納得して時雨達と一緒に就寝すると、すぐに寝息を立てて夢の中だ。
(私も寝よう……)
時雨も目を閉じて無心になると、段々と布団の温もりが全身を包んで夢見心地になっていく。
そうしている内に自然と寝返りを打って、そのまま朝までぐっすり寝られると思っていた。
(お……重い)
身体に何か圧し掛かるような感覚に囚われるのと同時に柔らかい感触が全身に伝わってくるのだ。
耐えきれなくなった時雨はゆっくり目を開けてその正体を確かめようとする。
「えっ……理恵?」
ぼんやりと視界に映ったのは理恵の顔であった。
まだ夢を見ているのかと思ったが、布団から彼女の温もりに差し変わっていた。
「なっ! 何やってるの」
徐徐に頭が回り始めて置かれている状況を把握する。
柔らかい感触の正体は理恵の人肌であり、いつの間にか時雨と身体を寄せ合っていたのだ。
「ちょっとした観察よ。夜に女の子が抱き付いて来たら、異世界転生した時雨はどんな反応をするのかってね」
完全に研究者として探求心のスイッチが入った理恵は観察と称してこの場を楽しんでいる。
一方で身体を無造作に動して振り解こうとする時雨であるが、全く抜け出さないどころかその分柔らかい感触とほんのりと女性特有の甘い匂いがする。
「大声出しちゃうと、優奈ちゃんが起きちゃうよ? この現場を見られたら、果たしてどんな想像をしちゃうかな」
時雨に覆い被さっている理恵の構図である。
優奈の視点で考えれば、同級生の女同士が夜な夜な身体を寄せ合っていれば特別な関係だと勘違いされても致し方ない。
「ふふっ、このまま楽しい事する?」
「加奈みたいな冗談はやめてよ」
「私は大真面目よ。時雨以外で実験してもよかったけど、やっぱり一番面白い反応が期待できるのは時雨じゃん」
満足そうにしながら、理恵が想像していた展開以上となった。




