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第380話 姉と妹

 十分に休んだおかげで時雨の体調も回復したところで、キャスティルのマンションへ戻った。

 とくに加奈は宿題の進捗が芳しくないので、必然的に泊まっていく流れになる。


「日も暮れたから、今日はここに泊まっていけ」


 キャスティルの厚意に甘えて、時雨達は宿を提供してくれたキャスティルにお礼の一言を述べる。

 キャスティルは時雨達を残して一人書斎に入ると、「しばらく自習していろ」と言い残す。

 とりあえず時雨が最初に通された部屋に集まり、時雨達は適当に座って雑談に興じる。


「マジで助かったよ。私一人置いていかれたら、地獄を見ていたかもしれないわ」


「そんな大げさな」


 加奈は自分だけ居残りさせられずに済んで安堵を覚える。

 地獄を見させるような状況を作ったのは加奈自身に原因があるので、同情の余地はない。


「時雨ちゃんとまたお泊りできて嬉しいな」


 一方で、香は時雨に飛び付いて同じ屋根の下で一緒に過ごせる事に歓喜している。

 それを横目に理恵は微笑ましく二人を眺めている。


「香は相変わらずねぇ。今日は頭をフル回転させてプールで存分に泳いだから体中クタクタよ」


 加奈は欠伸を洩らして座布団を枕代わりにすると、そのまま眠りにつこうとする。

 自慢の長耳も加奈と同調するようにくたびれた様子で疲れているのは一目瞭然だった。


「こうして黙っていれば、クールなダークエルフって感じなんだけどね」


 目を閉じて寝息を立て始めている加奈を理恵は観察するように覗き込んでいる。

 絵に描いたような容姿端麗なダークエルフなので、理恵の言う通り寡黙でミステリアスな雰囲気はあるのだ。


「時雨……それは饅頭じゃなくて私のおっぱいよ」


 まったく何の夢を見ているのやらとクールとは真逆な存在なのが加奈だ。

 薄着でこのままにしていたら風邪を引くかもしれないので、布団に移動させようと時雨と理恵が加奈の身体を支える。


(世話のかかるダークエルフだ……)


 相変わらず寝言は続いて、クールな顔は見る影もなくニヤついてしまっている。

 起こさないようにゆっくり布団へ寝かしつけると同時に玄関先の呼び鈴が鳴る。


「誰だろう?」


 時雨は立ち上がって部屋の外から玄関先を覗くと、書斎からキャスティルが出て来て応待する。

 階下の住人であるゴスロリ服の女性がまた苦情を入れに来たのかと脳裏を過ぎって身構えてしまったが、玄関先にいたのは時雨がよく知る人物であった。


「お姉ちゃんはどちらに?」


「あそこの部屋にいる」


 キャスティルが指差すと、客人を招き入れて時雨達のいる部屋へ通す。

 足音が段々近付いて来ると、時雨は部屋を飛び出して客人に挨拶を交わす。


「久しぶりだね。優奈ちゃん」


「時雨さんも参加していたのですね」


 客人の正体は小さな身体で鞄を背負っている加奈の妹、優奈であった。

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