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第376話 プール

「またのお越しをお待ちしております」


 店の女神は昼食を済ませた時雨達を見送り、涼しかった店内から一転して蒸し暑いアスファルトの上を歩いている。


「何で私のお寿司だけバラエティー色が濃いのよ。あー、もうこの暑さには参っちゃうし、服を脱いで水風呂に浴びたい気分よ」


「だからって、ここで裸になるなんて真似は絶対止めてよ」


「そんな事しないわよ。痴女じゃあるまいしね」


 十分に痴女の素質はあると思うんだよなと時雨は思っていると、水風呂を浴びたい加奈の気持ちは分からなくもない。

 表裏一体の心を宿す加奈の寿司には一貫だけワサビが大量に盛られたのが含んでおり、運が悪い事に最初の一口目で加奈は引き当ててしまった。

 テレビのバラエティー番組で挑戦するようなロシアンルーレット方式のイベントに加奈は顔を真っ赤にして長耳に至ってはワサビの刺激で一時的に垂れ下がっている始末だ。


「そうだ! これからプールでも行きましょうよ」


 加奈がそう言うと、冷たいプールの水を泳いでリフレッシュしたい一心で提案する。


「プールって水着を持ってきてないよ」


「そんなのは現地にある購買店で揃えられるわよ。皆も行きたいわよね?」


 あまり乗り気ではない時雨は水を差すが、諦め切れない加奈は皆をプールに扇動するように煽り立てる。


「うん、僕もプールに入りたいなぁ」


 それに乗っかろうとする香であるが、時雨と理恵はそんな許可を出す筈もないと赤髪の女神の反応をじっと見つめている。


(大体の予想はできるけど……)


 午後はこれから戻って夏休みの宿題に取り掛かると決まってるだろ。

 そんな台詞が飛んで来るのは安易にできてしまう。


「却下だ」


 その一言で加奈の希望は潰えたが、加奈は諦めきれなかった。


「そんな事言わずに、少しだけ泳いで行きましょうよぉ」


「ベタベタと暑いから寄って来るな」


 キャスティルに擦り寄ってお願いをする加奈であるが、それは逆効果となってキャスティルは邪険そうな顔を浮かべる。


「是非とも、もう一度海で見かけた女神様の水着を拝みたいのです」


「ふん、お前は遊びたいだけだろ」


「そんな事は決してありません。時雨やシェーナも『へへっ、女神様達の水着は刺激的でたまらねえぜ』って絶賛してましたし、ここは一つ哀れな子羊のためにプールへ行きましょう!」


 誰が哀れな子羊だと時雨はこの場にいないシェーナの分も含めて懸命に否定する。

 キャスティルも加奈の芝居がかった言葉を真に受けてはいない様子だ。


「その熱意を普段の勉強に生かしてくれたら、文句はねえんだがな」


「まあまあ、この暑さですし折角ですから少しだけ寄って行きましょうよ」


 意外にも理恵が加奈の提案に乗っかると、キャスティルと目を合わせてお願いをする。

 香も時雨とプールで遊びたい下心があるので、賛成者は三名となった。


「……いいだろう。そのかわり、宿題が終わるまで家に帰さねえからな」


 条件付きでキャスティルが折れると、加奈の希望通りプールへ行くのが決定された。

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