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第374話 怒りに満ちた女神②

「お……落ち着いて下さい!」


 理恵が宥めるように取り繕うが、依然として糸目は全開どころか怒りで目が血走っている始末。

 時雨も間に入って怒りの矛先を収めるために謝罪する。


「失礼な物言いをして申し訳ありませんでした。よろしければ、無知な私達に女神様からミール様とキャスティル様についてお話をお聞かせ下さい」


 頭を下げる時雨に倣って香も後に続くと、加奈もフォークの先端を覗き込みながら「私からもお願いします」と同調する。

 皆の想いが通じたのか、女神は見開いていた目は糸目に戻り、フォークを収めてくれた。


(よかった……)


 時雨達は安堵の息を漏らすと、女神は厨房の奥から一冊の本を手にして来た。


「なかなか殊勝な心掛けですね。いいでしょう、ミール様とキャスティル様の素晴らしさを存分に語らせてもらいます」


 そう言うと、女神は饒舌になって喋り始める。

 とくに創造神ミールについては熱量が凄まじく、群がる子供達に手を差し伸べている女性の絵画の前に立って見せる。


「この絵画は母なる神ミール様を想像して描いて見ました。慈愛に満ちたミール様を私のような家畜の豚で表現するのはこれで精一杯ですが、いつかキャスティル様のように私もミール様から寵愛を受けるような存在になりたいと常日頃から思っています」


 絵画に写っている女性のモデルはミールだったのかと時雨達は改めて絵画の女性とミールを比べるが、似ても似つかないなと言うのが一致した感想だ。

 何より厄介なのが、目の前にいる女神はミールを信奉するミール教の信者と言っても過言ではない。

 ここで似てませんよと指摘したところで、待っている未来は容易に想像ができてしまう。


「お前等、何やってんだ?」


 店の出入口の扉が開かれると、外の喫煙所で一服していたキャスティルが戻って来た。

 時雨達が絵画の前に集まっているのを不審に思ったキャスティルは尋ねると、嬉々として店の女神はその経緯について語った。


「とりあえず、歯食いしばってろよ」


 事情を理解したキャスティルは店の女神を指定の位置に立たせて時雨達を離れた場所に移すと、そのまま店の女神を逆さまに持ち上げて背面を敷いてあるマットの上に叩き付ける。


「うわ……豪快なブレーンバスターが決まったわね」


 加奈は思わず目を背けてしまうと、キャスティルの怒りが篭ったブレーンバスターで店の女神はマットの上に沈んだ。

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